「闇に香る嘘」の下村敦史が書く冤罪と主題としたミステリー。
「冤罪がなぜ起きるのか?」というのは、色々なところで語られていることで、目新しさがあるわけではないけど、本書「真実の檻」は冤罪問題だけでなく、「家族」というテーマも乗せていて物語として良き良き。
「生還者」、「闇に香る嘘」に続いて3冊目の下村敦史。やっぱり好きだな。
1994年、現職の検察官が殺人犯として逮捕され、死刑判決を受けた―2015年、大学生の石黒洋平は、母が遺した写真から実の父がその死刑囚・赤嶺信勝であることを知ってしまう。苦悩する洋平は冤罪の可能性に賭け、雑誌記者の夏木涼子と私的な調査を開始する。人はいかにして罪に墜とされてゆくのか、司法とは本当に公正なものなのか、そして事件の真相は!?『闇に香る嘘』の新鋭がおくる、迫真のリーガルミステリ!!
引用:楽天ブックス
思わせぶりなプロローグのあと、実の父が殺人犯だった。と主人公である石黒洋平が気づくことから物語がスタート。
こういう導入を書けるのは見事。しっかりと心掴まられる。
実の父の冤罪事件を追うのにあたり、他の冤罪事件のいくつかに関わっていく石黒陽介と記者の夏木涼子。
他の冤罪事件は痴漢冤罪から、実際にあった事件を元に着想を得たであろう事件を、別角度で見ていく。
この構成が面白く、まるで連絡短編集のように、一つづつ冤罪事件を紐解いていく。
物語後半まで他に主要な登場人物が増えないとなると、メタ的推理ですでに亡くなった母か、育ての父、もしくはやはり実の父、のどれかが真犯人なんだろう、ということは簡単に予想がつく。
まぁ、本書は犯人当てミステリーではないかな、という印象。
読者が推理できる要素は全然ないし。
やはり、そういうミステリー的な点より実の父の冤罪を「信じたい」という気持ちや育ての父に対する「申し訳ない」という気持ちの揺れ動きや、ラスト育ての父が真犯人だった。とわかってからの息子としての行動なんかが丁寧に描かれている。
事件の起こった過程なんかはさすがにちょっと安易というか安っぽく感じてしまったのは残念。