美輪和音「強欲な羊」

本屋で見かけるたびになんとなく気になっていた表紙とタイトル。
ふと、最初の何行か立ち読みしたらこれは面白いと確信。
脚本家としての経験がある人らしく、新人というのはずるいくらいの筆力。
「羊」をテーマにした短編集。
そのどれもが怖くて良き。

あらすじ

美しい姉妹が暮らすとある屋敷にやってきた「わたくし」が見たのは、対照的な性格の二人の間に起きた陰湿で邪悪な事件の数々。年々エスカレートし、ついには妹が姉を殺害してしまうが―。その物語を滔々と語る「わたくし」の驚きの真意とは?圧倒的な筆力で第7回ミステリーズ!新人賞を受賞した「強欲な羊」に始まる“羊”たちの饗宴。企みと悪意に満ちた、五編収録の連作集。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

強欲な羊

「わたし」が語る姉妹の生い立ちや確執。
そこから真犯人へと至る、という構成はすごく良き。
読者を裏切ることを一番に考えていて、ちょっと詰めが甘い部分はあるものの、独特の読み心地と疑いの目がどんどんと移り変わっていってしまうのは、作者に見事にやられた感じで良き。

背徳の羊

舞台が急に現代になり驚く。
ドロドロとした不倫もの。
この短編も疑いが二転三転し、作者にまんまとやられてしまう。
けど、最後のどんでん返しの必要性はよくわからぬ。

眠れぬ夜の羊

いわゆる「信頼できない語り手」もの。
足元が安定しない物語でこういう雰囲気は大好き。

ストックホルムの羊

舞台は中世。
中世とミステリーってだけでワクワクする。
「強欲な羊」もあったおかげでそんなに急な感じもせずに、どちらかというと「待ってました」という気持ちになる。
カミーラ、ヨハンナ、イーダ、アン・マリーの4人がそれぞれ語る証言からだんだんと真実が見えてくるものの、実際の舞台は現代だった、にはしてやられた。
だけど、タトゥーシールはどうよ・・・
ちょっと無理やりすぎるかな。

生け贄の羊

連作の締めとして、無理やり作ったような作品。
正直これはいらなかった。
連作短編集の方が売りやすいとかいろいろあるんでしょうけど、さすがに雑。
そもそも各短編がリンクする必要もなく、完全に蛇足だ。

まとめ

軽めの読み心地でしっかりと「イヤミス」していて好み。
とにかく「生け贄の羊」が残念。
こういうのを読むと、やっぱり今の出版業界って大変なのかな、って不安になってしまう。

2019年 年間ベスト

  1. 平山夢明「ダイナー」
  2. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 周木律「眼球堂の殺人」
  7. 市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」
  8. 宮下奈都「たった、それだけ」
  9. 古処誠二「アンノウン」
  10. 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
  11. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  12. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  13. 高山一実「トラペジウム」
  14. 辻村深月「きのうの影踏み」
  15. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  16. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  17. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  18. 美輪和音「強欲な羊」
  19. 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
  20. 金原ひとみ「星へ落ちる」
  21. 豊島ミホ「夏が僕を抱く」
  22. よしもとばなな「ハゴロモ」
  23. 神宮司いずみ「校舎五階の天才たち」
  24. サキ「サキ短編集」
  25. 中町信「天啓の殺意」
  26. 三浦しをん「小暮荘物語」
  27. 彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」
  28. 東野圭吾「赤い指」
  29. 湊かなえ「リバース」
  30. 西澤保彦「七回死んだ男」
  31. 麻耶雄嵩「貴族探偵対女探偵」
  32. 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
  33. 雫井脩介「犯罪小説家」
  34. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  35. 下村敦史「真実の檻」
  36. 河合莞爾「デッドマン」
  37. 蒼井上鷹「出られない五人」
  38. 貫井徳郎「ドミノ倒し」
  39. 澁澤龍彦「秘密結社の手帖」
  40. 小山田浩子「穴」
  41. 北森鴻「共犯マジック」
  42. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  43. ジェシー・ケラーマン「駄作」
  44. 大山誠一郎「密室蒐集家」
  45. 日高由香「ゴメンナサイ」
  46. 長崎尚志「闇の伴走者 醍醐真司の博覧推理ファイル」
  47. 獅子文六「ちんちん電車」
  48. 堀内公太郎「スクールカースト殺人同窓会」
  49. 島田荘司「御手洗潔の挨拶」
  50. 堀内公太郎「スクールカースト殺人教室」
  51. 菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」
  52. 松下麻理緒「誤算」
  53. 小林由香「ジャッジメント」
  54. 小杉健太郎「神の子(イエス・キリスト)の密室」
  55. 美輪和音「8番目のマリア」
  56. 大石圭「60秒の煉獄」
  57. 小林聡美「読まされ図書室」
  58. 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」
  59. 矢部嵩「紗央里ちゃんの家」
  60. おかもと(仮)「空想少女は悶絶中」