こんな小説がもう90年以上も前に書かれていたということに驚く。
優れた作品は時代を超える。
全く色褪せていないし、今読んでもちゃんと怖く、ちゃんと面白い。
タイトルを、ずうっと「パノラマ島奇譚」だと思っていたので、本書のタイトル見たときにびっくりした。
Wikipediaによると
初出時のタイトルは『パノラマ島奇譚』で、単行本収録時に『パノラマ島奇談』と改題された。しかし、収録時等の表記は「奇譚」、「奇談」、「綺譚」等必ずしも一定していない。
だそうで、そんな適当な。
ちなみに「奇談」でも「きたん」と読むようです。
小説家人見広介は、自分と瓜二つの旧友、菰田源三郎の急死を知らされる。広介は大富豪の源三郎になりすまし、菰田家の莫大な財産を手に入れるという、荒唐無稽な計画を実行する。そして広介は、無人の孤島に自分が空想した終生の夢のパノラマ島を創り上げた!パノラマ島で展開される妖美な幻覚ともいえるあやしの怪奇譚は、読者を夢幻の世界へと誘い込んでゆく・・・・・・。 表題作のほか、「白昼夢」「鬼」「火縄銃」「接吻」4編を収録。
引用:楽天ブックス
太宰治の最高傑作は「人間失格」か「葉桜と魔笛」で悩むところ。
宮沢賢治だったら断トツで「黄いろのトマト」。
三島由紀夫だったらなんだかんだ言って「金閣寺」になるだろう。
と言ったところで江戸川乱歩の最高傑作は何になるだろう。
「押絵と旅する男」も「柘榴」もいいし、もちろん本書に収録されている「パノラマ島奇談」なんかも最高。
導入部分やラスト間際はテンポよく進むのに、なぜか途中のパノラマ島の幻想的な様子の描写のあたりは少々間延びしている印象はある。ここが一番の見せ場と言えるんだけど、さすがに退屈に感じる人も多かったらしく、連載当時にもそういう意見は多かったみたい。
しかし、圧倒的な描写力や幻想的で官能的な雰囲気、カタルシスを感じる結末など、さすがの江戸川乱歩。
なんとなくだけど、現代だったら人見広介は漫画家って設定になりそう。
その他の短編についても少しだけ。
本当に見事な短編。
短いながらも、美しさとその美に執着する人間の怖さ。
白昼夢を見ていたのが誰だったのか。
現代まで通じるサイコパスなキャラクターがこんな昔にすでに完成されている。
それが、江戸川乱歩が作り上げたものなのか、人間とはずうっとこんな感情を持っているものなのか。
そして、僕の大好きな「アップクチキリキアッパッパァ」も。
探偵小説。
大胆なトリックだけど、これ某ドラマでも使われてた。
この短編集にこれを入れたのは正直編集のミスだと思う。
作品はいい作品なんですけどね。
初めて読んだ気がするな。
これ大好き。
現場の様子の描写とタイトルから「まさか……」と思いつつ。