日高由香「ゴメンナサイ」
ホラー小説。
そして、いかにもな携帯小説ではある。
携帯小説ってもっと読みづらい印象があったけど、割と読みやすい。
「セカチュー」とかもっと目滑りした覚えがあるんだけどな。
携帯小説だからと言って毛嫌いしなくてもよいのかもしれない。
あらすじ
この話は、私の身に起こった出来事です。高校二年生になった私は、黒羽比那子さんと同じクラスになりました。黒羽さんは、成績抜群ですがその幽霊みたいな風貌で気味悪がられていました。クラスでも、リーダーの園田さんを中心に、次第にいじめられるようになりました。ある日のホームルームで、黒羽さんが文化祭の演劇用にシナリオを書くことになりました。園田さんが、黒羽さんを吊るし上げるために仕組んだのです。二日後、黒羽さんが書いたシナリオを授業中に読んでいた園田さんのとりまきの一人が、急に苦しみ出しました。そして…。人気ケータイサイトに投稿され日本中を震撼させたある女子高生の告白。新たに見つかった「黒羽比那子の日記」「浦野祐子の手紙」も収録。
引用:楽天ブックス
日高由香 双葉社 2011年07月
売り上げランキング :
ネタバレありの感想
魔法のiランドに掲載されていたようで、あの閉鎖的な雰囲気のネットの世界でこれを発表したアイデアは素晴らしい。
リアルタイムで読んだ人は本当に怖くなった人も多かったことだろう。
ネタとしてはほぼそのまま「リング」ではある。
ではあるけど、それをビデオから小説にし、「魔法のiランド」という舞台を使って日記調にしたというアイデアで勝利。
僕は今回紙の本で読んだんだけど、小説内でも、「誰かが自分の身かわいさで出版するかもしれません」という台詞を入れることで、携帯から離れても臨場感を残したのも上手。
ただ残念なのは、呪いの文章そのもの。
どうなんだろうなぁ、携帯(ガラケー)で見ると結構な迫力があるのかな?
紙の本で読んだ限りだとどうにもチープに見えてしまった。
呼吸を意識させる技術的な部分と、呪いだと認識させるオカルト的な部分によって完成する、というのはなかなか面白かった。
これは、守備範囲を広げたのか、狭めたのかわからないけど”それっぽく聞こえる”というのはフィクションとして正解ですよね。
黒羽さんの文章が天才的っていう設定は不要だったのでは?
第2章の黒羽さんの日記、別にうまくないもの。
頭がいいせいで、周りから疎まれるという理不尽さなんかはいい味になっているが、文章が天才的にうまいというのはどちらかというと足枷になっていた。
文章は別にうまくないけど、努力と恨みの気持ちだけで呪いの文章を書きあげられた、という方がより怖かったと思う。
映画
映画にもなってるんですね。
アイドル映画に。
アイドル映画ってホラーが多いけどなんでなんだろう。
恋愛ものにし辛いからなのかな。
これ、映画でも呪いの脚本だったり文章だったり、なんだろうか。
映画という媒体ではそれだと活かすの難しそうだけど、呪いの映像にしたらそれこそ「リング」だもんね。
気にはなるけど多分見ない。
怖いから。
まとめ
日高由香としては本書「ゴメンナサイ」しか出版していないのね、そういう企画で通したのも良き。
正直、特別面白い、ってわけではないけど、こういう本・活字の世界であることを活かした作品は好きだし、うれしくなる。
2019年 年間ベスト
- 平山夢明「ダイナー」
- 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
- 紗倉まな「最低。」
- 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
- 綿矢りさ「憤死」
- 周木律「眼球堂の殺人」
- 今村昌弘「屍人荘の殺人」
- 市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」
- 豊島ミホ「底辺女子高生」
- 宮下奈都「たった、それだけ」
- 小路幸也「空を見上げる古い歌を口ずさむ」
- 彩瀬まる「神様のケーキを頬ばるまで」
- 小林泰三「アリス殺し」
- 古処誠二「アンノウン」
- 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
- 壁井ユカコ「サマーサイダー」
- 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
- 高山一実「トラペジウム」
- 月原渉「首無館の殺人」
- 辻村深月「きのうの影踏み」
- 朱川湊人「都市伝説セピア」
- 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
- 高橋由太「紅き虚空の下で」
- 美輪和音「強欲な羊」
- 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
- 金原ひとみ「星へ落ちる」
- 豊島ミホ「夏が僕を抱く」
- 北山猛邦「猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数」
- 降田天「彼女はもどらない」
- よしもとばなな「ハゴロモ」
- 河野裕「いなくなれ、群青」
- アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」
- 神宮司いずみ「校舎五階の天才たち」
- サキ「サキ短編集」
- 中町信「天啓の殺意」
- 三浦しをん「小暮荘物語」
- 柾木政宗「朝比奈うさぎの謎解き錬愛術」
- 彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」
- 東野圭吾「赤い指」
- 小林泰三「世界城」
- 西尾維新「化物語」
- 湊かなえ「リバース」
- 西澤保彦「七回死んだ男」
- 麻耶雄嵩「貴族探偵対女探偵」
- 橋本紡「彩乃ちゃんのお告げ」
- 乙野四方字「ミウ -skeleton in the closet-」
- 豊島ミホ「大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル」
- 清涼院流水「ジョーカー 」
- 清涼院流水「コズミック 」
- 早坂吝「探偵AIのリアル・ディープラーニング」
- 歌野晶午「正月十一日、鏡殺し」
- 西本秋「闇は僕らをつないでいる」
- 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
- 雫井脩介「犯罪小説家」
- はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
- 下村敦史「真実の檻」
- 河合莞爾「デッドマン」
- 蒼井上鷹「出られない五人」
- 笹沢佐保「どんでん返し」
- 貫井徳郎「ドミノ倒し」
- 村崎友「夕暮れ密室」
- 澁澤龍彦「秘密結社の手帖」
- 北森鴻「共犯マジック」
- はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
- ジェシー・ケラーマン「駄作」
- 大山誠一郎「密室蒐集家」
- 深木章子「敗者の告白」
- 佐々木丸美「崖の館」
- 清涼院流水「全日本じゃんけんトーナメント」
- 日高由香「ゴメンナサイ」
- 青柳碧人「猫河原家の人びと 一家全員、名探偵」
- 太田忠司「僕の殺人」
- 悠木シュン「スマート泥棒」
- 小山田浩子「穴」
- 長崎尚志「闇の伴走者 醍醐真司の博覧推理ファイル」
- 獅子文六「ちんちん電車」
- 堀内公太郎「スクールカースト殺人同窓会」
- 島田荘司「御手洗潔の挨拶」
- 堀内公太郎「スクールカースト殺人教室」
- 菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」
- 藤崎翔「殺意の対談」
- 松下麻理緒「誤算」
- 小林由香「ジャッジメント」
- 朝倉宏景「白球アフロ」
- 小杉健太郎「神の子(イエス・キリスト)の密室」
- 美輪和音「8番目のマリア」
- 大石圭「60秒の煉獄」
- 小林聡美「読まされ図書室」
- 平川陽一「山と村の怖い話」
- 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」
- 矢部嵩「紗央里ちゃんの家」
- 浅暮三文「困った死体」
- おかもと(仮)「空想少女は悶絶中」