辻村深月「光待つ場所へ」

またもやスピンオフ的短編集。
長編はいいのに短編はイマイチな作家さん、短編はいいのに長編はイマイチな作家さん、ってたまにいますよね。
長編と短編で小説の書き方って変わるんでしょうね。興味深い。
辻村深月も長編の方がいいと思うんだけど、スピンオフ的なこともあって、短編というよりは長編作品の1エピソードのような捉え方もできてとてもいい。

それでもスピンオフということで「冷たい校舎の時は止まる」「スロウハイツの神様」「ぼくのメジャースプーン」「名前探しの放課後」「凍りのくじら」あたりを読んでいるとより楽しめるかもしれないし、読んでなくても充分楽しめるかもしれない。
「ロードムービー」はスピンオフ感強かったけど、こっちは独立した短編としても充分に魅力的です。

あらすじ

大学二年の春。清水あやめには自信があった。世界を見るには感性という武器がいる。自分にはそれがある。最初の課題で描いた燃えるような桜並木も自分以上に表現できる学生はいないと思っていた。彼の作品を見るまでは(「しあわせのこみち」)。
文庫書下ろし一編を含む扉の開く瞬間を描いた、五編の短編集。
引用:Amazon

ネタバレありの感想

どれもいいんですけど、「しあわせのこみち」と「樹氷の街」が好きです。
「樹氷の街」に関してはふみちゃんが出てるってことだけで、もう好きなのかもしれないけど。

しあわせのこみち

絵が好きで、それなりの自信もあって、それでも絵の道で生きて行く覚悟を持てず、芸術学部のないT大へ進学した「冷たい校舎の時は止まる」の清水あやめが主人公。

清水あやめが素晴らしいのは同年代の人間が作った素晴らしい作品に対してちゃんと衝撃を受けることができるし、ちゃんと悔しがれるところ。

芸術とはなんぞや、みたいな話がすごい好きなんですよ、僕。
芸術のあり方、芸術家のあり方をすごくよく表してる1編だと思うよ、僕。

樹氷の街

大好きなふみちゃんも出てきますが、メインは「名前探しの放課後」の天木と倉田梢というイタい女の子がメイン。
あと「凍りのくじら」の松永くんも大活躍です。多恵さんも大活躍。
多恵さん、やっぱりいいなぁ。辻村深月作品の中で一番癒されるキャラだと思う。

天木の葛藤する内面も見れて、「かわいいところあんじゃん」って思えて、「名前探しの放課後」だけ読んだときより彼のこと好きになれる。

倉田梢も最初は嫌なやつ、と思ってしまうんだけど、見事に成長してかわいくなって、この子の次の話を読みたい。
この子のこれからを知りたい。
ないのかな、どっかに出てないのかな。

2017年 年間ベスト

  1. 村田沙耶香「殺人出産」
  2. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  3. ルイス・サッカー「穴」
  4. 梓崎優「叫びと祈り」
  5. 舞城王太郎「煙か土か食い物」
  6. 舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」
  7. 柾木政宗「N0推理、NO探偵?」
  8. 城平京「虚構推理」
  9. 辻村深月「名前探しの放課後」
  10. 三島由紀夫「命売ります」
  11. 森博嗣「すべてがFになる」
  12. 米澤穂信「満願」
  13. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  14. 江戸川乱歩「江戸川乱歩名作選」
  15. 太宰治「人間失格」
  16. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  17. 深水黎一郎「五声のリチェルカーレ」
  18. 麻耶雄嵩「貴族探偵」
  19. 朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」
  20. 喜国雅彦「本棚探偵の生還」
  21. 森博嗣「冷たい密室と博士たち」
  22. 西澤保彦「殺意の集う夜」
  23. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  24. 森絵都「宇宙のみなしご」
  25. 湊かなえ「山女日記」
  26. 霧舎巧「名探偵はもういない」
  27. 泡坂妻夫「湖底のまつり」
  28. 降田天「女王はかえらない」
  29. 森絵都「気分上々」
  30. 辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
  31. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  32. 辻村深月「光待つ場所へ」
  33. エドガー・アラン・ポー「黒猫」
  34. 歌野晶午「そして名探偵は生まれた」
  35. 法条遥「忘却のレーテ」
  36. 折原一「グランドマンション」
  37. 辻村深月「ロードムービー」
  38. 瀬尾まいこ「強運の持ち主」
  39. 志駕晃「スマホを落としただけなのに」
  40. 桐山徹也「愚者のスプーンは曲がる」
  41. 峰月皓「七人の王国」
  42. 湊かなえ「母性」
  43. 飯田譲治 梓河人「盗作」
  44. 伊坂幸太郎「残り全部バケーション」
  45. 折原一「遭難者」
  46. 折原一「螺旋館の殺人」
  47. 芦沢央「罪の余白」
  48. 井上夢人「魔法使いの弟子たち」
  49. ジェフリー アーチャー「百万ドルをとり返せ!」
  50. 伊坂幸太郎「首折り男のための協奏曲」
  51. 竹吉優輔「襲名犯」
  52. 湊かなえ「境遇」
  53. 長谷川夕「僕は君を殺せない」
  54. 早坂吝「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」
  55. 蘇部健一「六枚のとんかつ」