詠坂雄二「インサート・コイン(ズ)」
「電氣人間の虞」の詠坂雄二。
「電氣人間の虞」大好きすぎるくらい大好きすぎて、他の作品読むのがちょっと怖かった。
プールサイドのレコーディング作業で読書勘を忘れつつあったので、どうせならと詠坂雄二を読むことに。
そしたら最高。詠坂雄二天才か。
テレビゲームをあまりしないタイプなのですが、それでも取り上げられるゲームはさすがによく知ったものたち。
ま、そのゲームを知らなくても本筋は大丈夫でしょうが、知らないと退屈であろう描写は結構ある。
逆に知っていると興味深く楽しめる面も。
「マリオが何故片手をあげてジャンプするのか?」や「キノコは動くのにファイヤーフラワーが動かない理由は?」などデザインの勉強にもなる。
「電氣人間の虞」と比べるとそりゃ見劣りするけど十二分に楽しい。
良き良き。
あらすじ
ゲーム誌ライターの柵馬は、新たな記事を書くために、日夜奔走する。動くキノコを求めて奥多摩へ。共にゲームに明け暮れた初恋の人が抱えていた秘密。尊敬する先輩ライターが残したメッセージの意味は?憧憬は現実に直面し、諦観に押し潰されそうな日々に、俺たちはどんな希望を抱けるのか?往年の名作ゲームを題材に描く、シニカルでほろ苦い五編の青春ミステリー。
引用:楽天ブックス
青春ミステリーというと、日常の謎系ものか?と思ってしまうが、そんなに青春ではないし、ミステリーも味付け程度に抑えたもの。それでも面白い。
詠坂雄二 光文社 2016年10月12日
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ネタバレありの感想
穴へはキノコを追いかけて
マリオのキノコを題材に、軽めのミステリー。
読みやすく、導入としてはいい。
残響ばよえ~ん
本筋はノスタルジーバリバリの初恋のあの娘の秘密。
ぷよぷよは下手だった、ってところで色覚に異常がある、というのはすぐわかってしまう。
知識の少ない当時はともなく、どうして現在の柵馬もそのことに思い至らないのか、は不思議。
俺より強いヤツ
やっぱり詠坂雄二が出てくる。やったー!
これは、まったくミステリーじゃない。
3人のうち、誰が嘘をついているのか?とかに持っていくわけでもないし、(けものへん)は何度もまたは複数箇所で行われていたのでは?って思いながら読んでたけど、なんの真相も出ないまま。
インサート・コイン(ズ)
インベーダーゲームというより、シューティングゲームを題材に。
短くさらっとしていたり、死者が出ていないせいで、イメージは薄いけど本書ではかなりミステリー成分が強い作品。
収監された先輩ライターのPCに残された「Inset Coin(s)」の文字。
そこからの多重推理は小粒ながらもすごくワクワクさせられる。
そしてまわりこまれなかった
本書ではわかりやすく一番ミステリーしていた。
「インサート・コイン(ズ)」と同様にある種の「ダイイングメッセージ」ものではあるんだけど、自殺というのは確定しており、友人の自殺ということに対する感傷やドラクエにまつわるアレコレなどうまくミックスしていてとても良き。
読み終わってみると、「そしてまわりこまれなかった」というタイトルがすごく効いている。
タイトルが最大の伏線という構造がとてもメタ的なヒントだ。
まとめ
詠坂雄二がやっぱり好きだ。
恐れずに他のも読んで行こう。
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