井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」

やっぱり井上真偽めちゃめちゃ好きだ。
その可能性はすでに考えた」の第二弾。
前作も最高だと思ったけど、本書「聖女の毒杯」はそれ以上。

奇跡を証明するために、考えうる全ての可能性を排除する探偵という最高な設定で、多重解決ものの名シリーズとなっている。
探偵は犯行があったことを証明するのではなく、犯行の可能性がなかったことを証明しなければいけないという設定が最高。
そして、その「犯行の可能性がなかったことを証明しなければいけない」場面作りも上手。

前作で、やれることはほとんどやってしまっていたような印象さえ受ける上、多重解決ものの大傑作、深水黎一郎の「ミステリー・アリーナ」も発売され、厳しい戦いだとは思うのですが、見事前作を超えているし、個人的には「ミステリー・アリーナ」も超えている。

あらすじ

聖女伝説が伝わる里で行われた婚礼の場で、同じ盃を回し飲みした出席者のうち、毒死した者と何事もなく助かった者が交互に出る「飛び石殺人」が発生。
不可解な毒殺は祟り神として祀られた聖女による奇蹟なのか?
探偵・上苙丞(うえおろじょう)は人の手による犯行可能性を数多の推理と論理で否定し、「奇蹟の実在」証明に挑む。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

第一部は問題編と探偵である上苙の代役として八ツ星少年が容疑者から出される5つの推理を否定していく。
盃を手渡す事によって向きが変わることを利用した〈奇数番殺害説〉や〈犬故意乱入説〉なんか、とても面白い推理だった。
そして、第一部最後のフーリンの独白の衝撃たるや。

犯人は、このヤオ・フーリンなのだから。

まさか、こんなに重要なキャラクターを第2作目で、捨てるってことはないよな。と思うと、もうページをめくる手は止まらない。

第二部に入ると第一部を超える無茶なトンデモ推理。
「普通はそんなのあり得ない」=「普通じゃなければあり得る」を否定しなければいけないという反証はより難しいものになる。

エリオの最初の推理が見事。
式前日のアミカの体調不良も花嫁によるピザへの毒の混入が原因だった。という第一部の八ツ星の反証を否定するもの。
それに対する上苙の反証が「燃やすゴミの日だった」という意外すぎる角度での反証。
なのにそれで、ちゃんと納得させられちゃうから名探偵ってすごいな。

そして、第一部の最後のフーリンの独白である、フーリン犯人説が今回の最大の目玉であることは間違いない。
ここに、探偵はどういう真相を見出してくれるのか。
犯人の自覚すら否定してしまうというめちゃめちゃすぎる名探偵。
上苙はJDCにも入れそうだ。

そして第三部ではまたもや、否定されてしまう奇跡。
これ、シリーズものとしてどう終わらせるんだろう。
奇跡が起きるのか、奇跡を諦めるのか。
どっちにしても問題作になりそうだし、名作になりそうだ。
続きが楽しみでしょうがない。
最高に良き。

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