島田荘司「御手洗潔の挨拶」
「占星術殺人事件」や「斜め屋敷の殺人」の島田荘司。
大掛かりなトリックが得意なのかな。
本書「御手洗潔の挨拶」は短編集で、大掛かりなものもありつつ、小粒なものもありつつ。
・数字錠
・疾走する死者
・紫電改研究保存会
・ギリシャの犬
の4編が入った短編集。
島田荘司の中でも評判のいい本書ですが、個人的には外れの方に分類されるかな。
あらすじ
嵐の夜、マンションの11階から姿を消した男が、13分後、走る電車に飛びこんで死ぬ。しかし全力疾走しても辿りつけない距離で、その首には絞殺の痕もついていた。男は殺されるために謎の移動をしたのか? 奇想天外にして巧妙なトリックを秘めた4つの事件に名探偵・御手洗潔が挑む短編集第1弾。
引用:楽天ブックス
島田荘司 講談社 1991年07月01日
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ネタバレありの感想
数字錠前
そもそも数字錠で閉じられた部屋を密室と宣言してしまうのはどうなんだ。
0〜9の3ケタの数字錠なんだけど、御手洗清の優しさから、途中やたらややこしい計算でパターンを多く見せ、警察の目を眩ますんだけど「0〜999」の1000通りってわからない大人達ってどうなのよ・・・
警察がある程度無能感あるのは探偵小説のお約束事なのでいいけど、無能すぎるのはNG。
その上、1000パターンだとしても時間が、とか言ってたと思ったら100の位と10の位をテープか何かで固定してたらもっと早い?
なんだそれ。指紋検出した時にテープ跡見逃すかね?
トリックの真相としては偶然に頼った部分もありつつでイマイチですが、人情話としては、御手洗潔のいつもと違った一面見れてなかなか良き。
疾走する死者
御手洗潔のジャズギターシーンが見れます。めちゃめちゃうまいらしい。
ファンサービス的シーン。
「疾走する死者」というタイトルとあらすじなんだけど、その大事な真相が偶然。
がっかりだ。
紫電改研究保存会
なんかごちゃごちゃした雰囲気なのかと思ったらすっきりしたいい落ちだった。
本書の中で一番好きな作品。
魅力的な会話劇と洒落た落ち。
ギリシャの犬
暗号もので、誘拐もの。
暗号の答えが橋の形ってのは、閃きよりも知識が必要な謎で、アンフェアじゃなかろうか。
これが漫画や、映像作品であれば話は違うけど、小説という媒体を使った謎としてはどうだろう。
それより問題なのは、暗号が橋の形の絵でした!って全然魅力的じゃないって所。
誘拐ものの方も、息子の隠し場所もすぐに想像がついちゃう。
まとめ
僕としては、正直いまいちなものばかり。
「占星術殺人事件」のようなおどろおどろしい雰囲気や、大胆なトリックも無いし、「斜め屋敷の殺人」みたいな思い切りもない。
ミステリとしてアンフェアかフェアかってのはどうでもいい問題だとしても、謎や犯行、ミステリーの魅力に乏しい短編集。
ただ、御手洗潔という探偵の魅力はたっぷり詰まった短編集ではある。
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