桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」

もしかしたら桜庭一樹初読みかな。
もっと色々な作家の本読まないとダメだな。
まだこの一冊だけなので判断はできないけど、面白いテンポの作家。
「少女七竈と七人の可愛そうな大人」も大げさすぎるほど傅いた言葉に溢れていて、なるほどこれが「GOSICK」か、と。

いや、違うかもしれないけど。
正直な感想としてはタイトルが大げさすぎる気はして、そこの期待は超えられていないけど、全体的にはなかなか楽しめた。
少女が少女のままで終わる話(成長しそうになるタイミングまでの話)なので、登場人物のその後や今後の関係性など、気になる点はいくつかあるものの、一瞬の煌めきのようなものは確かにある作品。

あらすじ

「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竃は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈―誰もが七竃に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竃の間柄にも変化が―雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。
引用:Amazon「少女七竈と七人の可愛そうな大人」

ネタバレありの感想

小説冒頭の

辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。ある朝とつぜんに。

という一文でもう作者の世界観に持っていかれた感じはある。
”いんらんな女”とまで宣言するのであれば、男遊びの部分をもっと詳細に描いて欲しかったと思ったけど、主人公は七竃という、この”いんらんな女”の美しすぎる娘、ということでプロローグは短めなんだな。
物語が終盤に近づくと、この母親の男狂いも、報われない恋から来たものだ、というのが分かってしまう。
そう、僕は「分かってしまった」と、少し残念に思ってしまった。
ここは受け取り方が人によって変わりそうだな。

七竈の周りには男が少ない。
祖父と、七竈によく似た雪風という少年くらい。
美しすぎる割には、男が寄ってこない。
美しすぎるものには、触れられないのか、と思いきや「緒方みすず」という普通の少女は雪風に恋をし、七竈に心酔する。
唯一出てくる「普通」という役割を持った緒方みすずが七竈にも雪風にも触れることが出来たのであれば、もっと他の男の匂いがしてきてもよかったのでは。

七竈は生まれ育った地と雪風を捨て、上京することを決意する。
その決意として、母親に頼んで髪を切ってもらうシーンはとても美しかった。
汚い部屋で美しすぎる少女の美しい髪をいんらんな母が切るという対比がとても見事。

巻末にはスピンオフ的な作品である「ゴージャス」が掲載されているんだけど、これは完全に蛇足。

2019年 年間ベスト

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  34. 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」