辻村深月「ロードムービー」

「冷たい校舎の時は止まる」のスピンオフ的な短編集。
なので「冷たい校舎の時は止まる」を読んでからにしましょう。そうしましょう。

あらすじ

運動神経抜群で学校の人気者のトシと気弱で友達の少ないワタル。小学五年生の彼らはある日、家出を決意する。きっかけは新学期。組替えで親しくなった二人がクラスから孤立し始めたことだった。「大丈夫、きっとうまくいく」(「ロードムービー」)。いつか見たあの校舎へ、懐かしさを刺激する表題作他、4編。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

1編ごとに思ったことを。

街灯

単行本に未収録の書き下ろしだそうで、「冷たい校舎の時は止まる」のスピンオフですよ。という、宣言のような。
期待煽られますよ。

ロードムービー

実はトシは女の子だったというオチまでの見せ方はさすが。
読んでいると自然に、ちゃんと違和感をもたせてくれるんですよね。

裕二と景子ができちゃった結婚というのは少し意外な感じですが、なんかそういうのも嬉しい。
そして、何より鷹野のかっこよさ。このかっこよさも「雪の降る道」があってこそなんだな、と。

小学生2人の逃避行に「ロードムービー」というタイトルをつけたの、すごい素敵。

道の先

やったね、充。
充は相変わらず梨香に想いを寄せているようで、それがいいことなのか、悪いことなのかは、それこそ本人にしかわからないことだろうけど、「冷たい校舎の時は止まる」というタイトルをつけていたことを考えると作者は「時は動く」方が自然なことだと思っているんじゃないかな、と。
そうであれば、充はまた別の人を見るべきなんじゃないだろうか。
小説としては次の「トーキョー語り」のための前フリなんじゃないか、って感じで単品としてはそこまで印象的ではないです。

トーキョー語り

遠山さんが「道の先」の千晶だったというところがすごくいい。
充がずうっと梨香のことを想っているように、遠山千晶はずうっと充のことを想っている。
それがなんかすごくいい。
遠山千晶にとって携帯電話がなにより大事なのはもちろん「道の先」で充に言われた

「これから先、俺はずっとその番号を変えない。つらくなったら、だからいつでもかけてきていい」

という言葉のおかげ、というかせいというか。
少なくとも遠山千晶にとって充のこの言葉がどれだけ救いになっているか。
いつか、充とうまくいって欲しい。充のためにも。

雪の降る道

わかりやすすぎますが、ヒロは鷹野のことで、みーちゃんは辻村深月のことで、菅原の兄ちゃんは榊先生のこと。
と、キャラクターはすごくわかりやすくバラしてくれます。
その代わりなのか、短編として「冷たい校舎の時は止まる」との繋がりとか無視して、個別の作品としてはこれが一番いいと思いますよ。

「ぼくのメジャースプーン」も好きだし、僕が子どもものに弱いだけかもしれないけど。

2017年 年間ベスト

  1. 村田沙耶香「殺人出産」
  2. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  3. ルイス・サッカー「穴」
  4. 梓崎優「叫びと祈り」
  5. 舞城王太郎「煙か土か食い物」
  6. 舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」
  7. 柾木政宗「N0推理、NO探偵?」
  8. 城平京「虚構推理」
  9. 辻村深月「名前探しの放課後」
  10. 三島由紀夫「命売ります」
  11. 森博嗣「すべてがFになる」
  12. 米澤穂信「満願」
  13. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  14. 江戸川乱歩「江戸川乱歩名作選」
  15. 太宰治「人間失格」
  16. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  17. 深水黎一郎「五声のリチェルカーレ」
  18. 麻耶雄嵩「貴族探偵」
  19. 朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」
  20. 喜国雅彦「本棚探偵の生還」
  21. 森博嗣「冷たい密室と博士たち」
  22. 西澤保彦「殺意の集う夜」
  23. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  24. 森絵都「宇宙のみなしご」
  25. 湊かなえ「山女日記」
  26. 霧舎巧「名探偵はもういない」
  27. 泡坂妻夫「湖底のまつり」
  28. 降田天「女王はかえらない」
  29. 森絵都「気分上々」
  30. 辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
  31. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  32. 辻村深月「光待つ場所へ」
  33. エドガー・アラン・ポー「黒猫」
  34. 歌野晶午「そして名探偵は生まれた」
  35. 法条遥「忘却のレーテ」
  36. 折原一「グランドマンション」
  37. 辻村深月「ロードムービー」
  38. 瀬尾まいこ「強運の持ち主」
  39. 志駕晃「スマホを落としただけなのに」
  40. 桐山徹也「愚者のスプーンは曲がる」
  41. 峰月皓「七人の王国」
  42. 湊かなえ「母性」
  43. 飯田譲治 梓河人「盗作」
  44. 伊坂幸太郎「残り全部バケーション」
  45. 折原一「遭難者」
  46. 折原一「螺旋館の殺人」
  47. 芦沢央「罪の余白」
  48. 井上夢人「魔法使いの弟子たち」
  49. ジェフリー アーチャー「百万ドルをとり返せ!」
  50. 伊坂幸太郎「首折り男のための協奏曲」
  51. 竹吉優輔「襲名犯」
  52. 湊かなえ「境遇」
  53. 長谷川夕「僕は君を殺せない」
  54. 早坂吝「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」
  55. 蘇部健一「六枚のとんかつ」