第27回横溝正史ミステリ大賞・テレビ東京賞受賞作だそうで、言われてみると確かにテレビドラマっぽい。
2時間ドラマっぽい。よく知らないけど。
登場人物がどれもテレビ的。表面的というか深みがないというか。第三者から見たイメージで固まったかのような登場人物ばかり。
わかりやすいキャラクターがわかりやすいドラマを起こす。
遺産を狙う男女の、欲望渦巻くノンストップ狂騒曲!
前夫のために蓄えも職場も失った看護師川村奈緒は、資産家の老人鬼沢の世話をするため大邸宅に住み込むことに。遺産のことしか頭にない一族に憤りを覚える奈緒だったが、鬼沢との結婚話が持ちかけられ――
引用:楽天ブックス
ミステリというよりはサスペンス。
サスペンスというよりは2時間ドラマ。
『遺産相続』と聞いて、まず連想するようなキャラクターがいっぱい出てきます。
太ってて嫌な奴な長女と、痩せてて嫌な奴な次女。
情けない長男と、その嫁と引きこもりの息子。
話好きで情報屋としての役割を持った家政婦。
妾腹でヤクザな息子が実はいいやつ。
と、キャラクターのテンプレ大集合。
まぁ、こんなのでいいのかな。
鬼沢の殺害方法が”入れ歯の洗浄液にアレルギーであるソバの成分を入れていた”、というものなんだけど、実行犯である美恵子は早く(旦那が癌で死ぬよりも早く)鬼沢を殺さなければいけなかったのにそんな不確かな方法、しかも事故にみせかけるのも難しい方法を使ったんだろう。
ミステリ的には落第。
主軸がミステリではなく、人間ドラマなので、そこはなんとか目をつぶるとしても、それでもどうしても納得できない部分もある。
敏也の嫌がらせによって、奈緒と敏也の婚姻届を勝手に出されていて、鬼沢と奈緒が結婚できなかった、とわかった時の恵太の行動は全くもって意味不明。
奈緒に連絡くらいするでしょうよ。
だいぶ大きなお金が動くんだから、多少ムカついたところでもう連絡取らない!となってしまうのが全く理解できない。
その前に奈緒からの嫌がらせで、敏也との籍を抜いていなかった、なんてやり取りがあったんだし、敏也による何かしらの妨害があった、と想像しても良いというか、想像しないほうが不自然。
せめて、恵太が奈緒に惚れていたとかそういうエピソード絡めたりすればなんか納得させられなくもなかったかもしれないけどさ。
そんなのもなく、ただ連絡を取らない。そんなバカいる?
結局物語を都合のいいように進めたいだけ。
もっと他の方法を考えなければいけない部分でしょうよ。
そういう点も含めてやっぱり人間が描けていない。
人間が描けていないのに人間ドラマが描けるわけもない。
住み込みの看護師っていう舞台作りは悪くないので、ちゃんとミステリーにするか、ちゃんと人間ドラマにするか、どっちかでもしていればもっと面白かったのに残念。
こうなってしまうと、軽く読めて時間はかからなかったのは良かった。