朱川湊人「都市伝説セピア」

朱川湊人のデビュー作で、僕としても初読みの作家。
個人的に都市伝説って題材が大好き。
本書もとてもいい空気感と昭和感。
どんでん返しやミステリー感もあって楽しい一冊。

あらすじ

人間界に紛れ込んだフクロウの化身に出会ったら、同じ鳴き真似を返さないといけない―“都市伝説”に憑かれた男の狂気を描いたオール讀物推理小説新人賞受賞作「フクロウ男」をはじめ、親友を事故で失った少年が時間を巻き戻そうとする「昨日公園」など、人間の心の怖さ、哀しさを描いた著者のデビュー作。
引用:Amazon「都市伝説セピア」

ネタバレありの感想

アイスマン

一冊読了して、この短編が一番好きだった。
他にもとても好みなミステリ的な短編もあったり、これよりよくできた短編もあるけど、それでも一番好きなのはこれだ。
自分の脳を発泡スチロールのようだった、と言ってしまえる感覚の独自性や、見世物小屋の描き方なんかも秀逸だし、河童の氷漬けというアイテムの存在感も見事。
そしてなにより、ですます調の語り口が雰囲気がとてもミステリアスで、すごく良き。

昨日公園

昭和が遠くなるにつれ、都市伝説も段々と僕らの生活から遠い存在になっていった。
そうすると、このような上手い話だったり切なくていい話っていうのが受けられやすい形なんだろうな。
今時な都市伝説。
「オレンジの種」の前振りもとても洒落てて、落ちはなんとなく読めるものの、描き方がとても丁寧で感動的。

フクロウ男

本書の中心となる作品。
「アイスマン」とは別の形であるが、都市伝説に真っ向から向き合った短編。
「フクロウ男」という都市伝説を作ろうとした男の物語。
実際にそういう人もいたんだろうな。
ラストの性別誤認の叙述トリックは出し惜しみをするようなものでは無く、最初から女装していたことを明かしてそこのやりとりを書いた方が物語に深みが出たんじゃないかな。
どんでん返しを欲しがる出版社の悪い癖じゃなかろうか。

死者恋

中年女性の語り口で語られる短編。
朱川湊人は色々な語り方ができる作家で、どれも高い基準で書けていてデビュー作とは思えない筆力。
これも落ちに以外性はないけど、それも都市伝説っぽさを演出する技術なんじゃなかろうか。
でも、そこに至るまでの物語はとても独特な感じ。

月の石

こういう(現実で解決されない)話を最後に持ってくるのはとても良き。
説明できてしまう都市伝説もあれば、どうやっても説明仕切れない不思議があるのも都市伝説でその両方が好き。
その2面性のうち、後者を本の最後に持ってきてくれるのはうれしい。

大阪万博での母との思い出話なんかもとても良かった。

まとめ

朱川湊人は「花まんま」という作品で直木賞も受賞しているようだし、そっちも読もう。
楽しみ。

2019年 年間ベスト

  1. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  2. 平山夢明「ダイナー」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  7. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  8. 高山一実「トラペジウム」
  9. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  10. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  11. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  12. 北森鴻「共犯マジック」
  13. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  14. 日高由香「ゴメンナサイ」
  15. 獅子文六「ちんちん電車」
  16. 島田荘司「御手洗潔の挨拶」
  17. 菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」
  18. 松下麻理緒「誤算」
  19. 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」