連城三紀彦が大好きな人が多い理由がなんとなくわかった。
美しくて、哀しくて、凛としててまさしく花のような作品集。見事。
本書「戻り川心中」が傑作というのは色々なところで聞く話だけど、まさしく傑作。名作。
良き良き。
大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に追いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。岳葉が真に愛したのは? 女たちを死なせてまで彼が求めたものとは? 歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。耽美と詩情――ミステリ史上に輝く、花にまつわる傑作5編。
引用:楽天ブックス
・藤の香
・桔梗の宿
・桐の柩
・白蓮の寺
・戻り川心中
の5編。
5編のいずれもがホワイダニットもの。
それもすごくミステリーとしてレベルの高いものでありながら、文体や表現も美しく巧い。
ミステリーとしても文学としても素晴らしい作品だ。
代書屋という職をうまく使った作品。
善行としての殺人という、真相は今の時代ではなかなか受け入れられるものではないけど、この時代、この立場なら、と思わされる。
切なくて哀しい真相。
鈴絵の境遇や福村の願望が鈴絵に犯行をさせてしまった。
物語としてとにかくワクワクする。
ホワイダニットものとしてまさかの動機。
棺と死体の価値が逆転する様は見事。
そして、小指の処分方法もすばらしい。
ラストでは少しだけ救われたような気分になるのもよかった。
母が殺したのは誰なのか?って思って読んでいると・・・
伏線が見事。
表題作でとにかく評判のいい短編。それもそうだ。
まず、筆力の高さよ。
美しい文体で美しい比喩表現、文学としてもレベルが高い。
トリックはすごく現代的な大技。
この文体や、時代感との違和感というか、裏切り方がとても心地よい。
とにかくどれも素敵な短編だ。
ホワイダニットもの、ということで、トリックというよりは人情的な部分に光が当たっていて、そこの書き方がとても丁寧で綺麗で良き。
素晴らしき短編集だ。