乾くるみってこんなのも書けるのか。
僕の中で乾くるみの評価がグンっと上がった。
ただ勘違いしないで欲しい。
とてつもなくくだらない。
いや、ミステリーというのはそもそもがくだらないものなのかもしれない。
すごく古い時代の本格臭(上手いこと言えた)を感じる。
城林大ミステリ研究会で、年末恒例の犯人当てイベントが開催され、サークル一の美人・赤江静流が、長身の彼氏を部室へ連れてきた当日、部室の本の上には、あるものが置かれていた。突如現れたシットを巡る尾篭系ミステリの驚愕の結末とは!?「読者への挑戦」形式の書き下ろし短編、「三つの質疑」も特別収録。
引用:楽天ブックス
昨今ネタバレに対してすごく厳しい世の中だなって思ってて。
内容紹介ってレベルのものですらネタバレとか言われちゃって。
それなのに、「伏線回収が見事」や「2度読み必須」や「どんでん返し」って言葉は気軽に使いまくってて、なんだか過ごしづらい世の中ですが、この作品はネタバレしないで読んだ方が楽しいと思う。
とは言うものの、真犯人にそこまでの意外性はなし。
それよりもやっぱり、事件が発覚した瞬間のインパクト。
Amazonのレビュー見ると楽しい。
「途中でやめた。」や「嫌悪感しかない。」などなど。
一番面白かったのが「フィクションだとしても、受け入れられません。」だってさ。
作中でも言われてるけど、殺人事件はよくてウンコはダメって人間ってクソだな。
「フィクションだからこそ、受け入れられません」だったらわかるんだけどね。
乾くるみって「イニシエーションラブ」のせいで、なんか見事なミステリーを書く人みたいに思われてるけど、「Jの神話」や「蒼林堂古書店へようこそ」なんか読んだ感想では、もっと良い意味で軽くて、さらっとしたミステリーを書く人なんだよな。
「嫉妬事件」もちょうどいい程度のくだらなさで、ミステリーの持つ娯楽性と下ネタの相性の良さを感じられる。
ミステリーとしてもよくできていて、Shitが死体の役目も果たしつつ、凶器としても存在する面白さ。
語り手=犯人と見せかけつつ、実は第一の被害者だった(が、生きて探偵役も兼ねる)という構造も面白い。
まぁ、「自演プレス」ってなんだよ、って気はしますが、割と楽しい一冊。
本格的で複雑な構造を構築しつつの駄洒落で締める。
なんとも贅沢な小説。