はっきり確信した。
僕は竹宮ゆゆこ大好きだ。
もう「とらドラ!の」という接頭語もいらないな。
「知らない映画のサントラを聴く」も「砕け散るところを見せてあげる」も素晴らしかったけど、本書も素晴らしい一冊だった。
「ゴールデンタイム」も 「わたしたちの田村くん」も未読なんで読んでみようかな。
積ん読消化したら。
いつになることやら。
逃げて、逃げて、逃げて。私は“彼”に出会う。樺島信濃は、逃げていた。誰から? 包丁を持った女から。なぜ? 愛人であることがバレたから。逃げて、逃げて、逃げて。今はスポーツジムのアルバイト。けれど、給料では生活費すら賄えず、貢がれたブランド品を売って、なんとか暮らす二十六歳の日々。これではダメだ。わかっている。でも。そんなある日、弟が元恋人とやってきて……。愛とは。家族とは。切なさ極まる長篇小説。
引用:楽天ブックス
感想に困る本ではある。
なので、まず率直に思ったこと。
これ人間失格だ。
信濃のダメ人間っぷりのおかしさや、生に執着している感じなんかのコミカルさ加減が人間失格を思い出させた。
そういえば信濃も容姿には恵まれていた。
表紙から受ける印象とは全く違う小説だった。
表紙のキャラクターも醍醐ではなく、睦月だろうし。
恋愛小説なんかではないし、信濃と醍醐の関係に胸キュンするようなことは全くない。
もどかしいとも思わない。
この2人の関係性に流れる恋愛の匂いは僕を苛立たせる。
それくらい僕は信濃に感情移入してしまっていた。
だけど、ラスト、信濃に死が近づいた時に、その時に醍醐が横にいてくれて本当によかった、と思ってしまった。
信濃の人生の選択は、これまでたくさん間違えてきている。
たくさんの人を傷つけ、迷惑をかけてきた。
逃げてはいけないところで逃げてきた。
前でも後ろでもどっちでもいいから進んでいたら、どこかに辿り着けた、というだけ。
必死でもがき続ける人間は美しい。
ところで、新潮文庫のあらすじもそうなんだけど、「弟が元恋人とやってきて……。」ってのがひどい。
もうちょっとうまく売ってくれ、と思うが、それはあくまで普段本を読んでいる人間の感想なのかもしれない。
竹宮ゆゆこ、直木賞とかもらってもいいんじゃねえかな。