女性作家から見た女性視点の物語が3編入った短編集。
爽やかそうな表紙で、文体もすっきりしているものの、どこか空恐ろしく居心地の悪い小説。
と感じたのは僕が男だからなのか。
離婚寸前の両親の間で自分がモノのように取り合いされることにうんざりしている小学生のリサ。別居中の父が住むマンションの最上階から下をのぞき、子供の自殺について考えをめぐらせることがもっぱらの趣味。ある日きまぐれに父の部屋を訪れると見覚えのない若い女の人が出迎えてくれて…。ほか二編。
引用:楽天ブックス
視点がとても女性的。
1冊通して、男性がやけに情けない。
悪い人間として描かれているわけではないんだけど、良く無い。
情けなかったり、だらしなかったり、魅力が少ない。
「ふじこさん」に出てくるお父さんなんか、ひどいもんだし、「夕暮れカメラ」に出てくる藤岡くんなんかも、くだらない人間として描かれている。
「手品師の春」に出てくる手品師はとても重要な役を担ってはいるものの、やけに中性的な存在として描かれている。
表題作。
子供は子供なりにというよりは、子供だからこそ、逃げ道として「死」を確保しているリサ。
家族のせいで、今の現実に絶望をしていたリサには逃げ道しかなかった。
そんなリサにふじこさんは、人生には「宝物を探す」という目的があることを教え、逃げ道だけでなく、明るい道もあることを示唆した。
だが、そのことによって、リサは「死」という逃げ道を塞いでしまったようだ。
それはきっといいことなんだろうけど、リサを現世に縛り付けたようなものでもある。
ふじこさんの描写がチープ。
これがいい女でしょ?かっこいいでしょ?って感じがプンプン臭う。
子供のリサから見た視点でかっこいい女性に見えたんだろうけど、ラストシーンで大人になったリサも描いているせいで、全体的にチープな印象になってしまう。
エピローグ的な部分は不要だった。
かっこいいおばあちゃんを描きたかったんであろう1編。
藤岡くんがかっこ悪すぎるんだよな。
小椋さんが藤岡くんに惚れるとかそういう描写は無くていいにしても、いくらなんでも、ダサすぎる。
おばあちゃんがボケたと信じ込んでいる藤岡家の面々が空恐ろしい。
シュールな怖さがある。
大島真寿美は家族に嫌な思い出でもあるのか。
3編とも家族の関係がどこか奇妙で「家族ごっこ」をしているような。
爽やかなような描きかたをしているけど、とても不安で気持ち悪い小説。