日本ホラー小説大賞受賞作。
ホラーと言ってもグロさは全然ないし、怖いって訳でもない。
評判がいいのは知ってた。ようやく読んだ。
「夜市」と「風の古道」の中編2つを収録。
物の怪の世界と人間の世界の境界線を描いた2編。
こういう物語を読んで怖さだけじゃなくて、懐かしさのような感覚を持ってしまうのは日本人特有なイメージがある。
なんとなく。
妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。
引用:楽天ブックス
文章は割と綺麗なんだけど、描写については物足りないと感じてしまう点が多かった。
何より、夜市に入るのが唐突すぎる。
もっとここを長くなってもいいから、上手く描写してくれると異世界感が出たのはないかな。
肝心の夜市自体の描写ももっとしっかりと描いて欲しかったな。
一番大事な部分だと思うんだけど、普通の夜祭で売っている物が変なだけなイメージ。
そのせいで緊迫感もないし、幻想的な感じも少ない。
人攫いに至っては「人攫いにしか見えない」くらいの簡潔すぎる描写。
正直残念。
また、夜市から出ると夜市での記憶は無くなるようですが、裕二はなぜ記憶を無くしていなかったのかがよくわからん。弟が人攫いから逃げていたから、という理由であれば今度は家族が弟の記憶を無くしていたのがよくわからん。
一番すっきりしないのは、10万で買える「何でも斬れる剣」を弟(老紳士)が横取りのような形で買ってしまうこと。
あの夜市でそんなに安く買える商品は他に無いのに、あれを弟(老紳士)が買ってしまうことで、いずみが外に出れる機会を失ってしまっている。人間である弟(老紳士)にそこまでする権利があるのか。
と、残念な点はあるけど、全体的には雰囲気あるし、そもそもの夜市という舞台設定は最高に魅力的だし、ラストも十二分に驚かされる。
ホラーというよりは和風ファンタジーと言うべき作品。
良き。