つまらん。こんなんでいいのか。
川村元気だから出版できたんだろうな。
実際売れたし、僕も買ってしまった。
残念。この本と、これを買った僕と、読んだ僕が残念。
川村元気という才能をどう捉えればいいのか。
プロデューサーという仕事がどういうものか理解しきってはいないが、プロデューサーとしては確実に優れた人であろう。
僕が見た映画でも「告白」「おおかみこどもの雨と雪」「何者」などよかったものから、「君の名は。」「バケモノの子」「バクマン。」なども平均以上の作品ではある。
まぁ、アニメの「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」はひどかったけれども。
とにかく、何かを生み出すことに関して、少なくともある程度の正解を出せる人だと思っていた。
そういうバランス感覚を持っている人だと思っていた。頭のいい人だと思っていた。
そんな理由で購入したもののやはりいまいち惹かれず積ん読していたものを読んだもののやはり期待外れというか、想像以上につまらなかった。
軽すぎる文体。僕は1時間弱で読了。
まぁ、軽すぎる文体っていうのが必ずしも悪いことではないんだけど、「命」「思い出」「家族」「絆」あたりをテーマに持ってきているのに、ここまで軽いとメッセージは沁みてこない。
当たり前かもしれないけれど、プロデューサーと作家、全然違うものなんだな。
郵便配達員として働く三十歳の僕。ちょっと映画オタク。猫とふたり暮らし。そんな僕がある日突然、脳腫瘍で余命わずかであることを宣告される。絶望的な気分で家に帰ってくると、自分とまったく同じ姿をした男が待っていた。その男は自分が悪魔だと言い、「この世界から何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得る」という奇妙な取引を持ちかけてきた。僕は生きるために、消すことを決めた。電話、映画、時計…僕の命と引き換えに、世界からモノが消えていく。僕と猫と陽気な悪魔の七日間が始まった。二〇一三年本屋大賞ノミネートの感動作が、待望の文庫化!
引用:楽天ブックス
この小説が気に入らない一番の理由はとにかく「命」が軽すぎる。
主人公の死、母親の死、猫(レタス)の死、トムさんの死と、短い物語なのにいたるところに転がっている死。
主人公の命は必要なものとして、それ以外のキャラクターの死に理由が無い。
父親と気まずくなるのは、母親が病気になる前からだし、家族の絆を描きたいなら、単純に母親・父親と上手くいってない、だけでいいでしょう。
「人が死ねば感動する」なんて思惑が見えてきて正直不快。
これは個人の判断で申し訳ないけど、「人が死んで感動する」のはいいけど「感動のために人を殺す」は大嫌いだ。
キャラクターは物語よりも上部に位置しておいてほしい。
一日の「命」のために世界から何かを無くす。ってところまではとてもよい。
だけど、そこからのルールがとにかくくだらない。
最後に無くすものを一回だけ使えるルールなんて、電話と映画でしか使われていない。
電話は月曜日の夜に消えているのに、次の映画は水曜日の夜に消えているような適当なルール。
勿体無い。
他にも色々気になった箇所はあるんだけど、一番ストレスになったのが元カノのエピソード、これは一体なんなんだ。
ブエノス・アイレスで知り合ったトムさんが亡くなったことでなぜ、2人が別れるの事になったのか全然入ってこなかった。こういうところでも「命」の扱いが軽すぎるって思ってしまう。
それに、元彼が死ぬって聞いて、それを受け入れている(信じている)のに、その段階では母親からの手紙を渡さない元カノのなんと残酷なことか。
もう一度会えなかったらどうするつもりだったんだろう。
と、キャラクターの行動も不快で、理解ができない。
つまらん。