「虚人たち」が難解だったので、軽いのを読みたくて。
リストラされたサラリーマンの復活物語ということで、現在無職でまだ次が決まっていない自分には少しタイムリーな本書。
思ったよりも良き小説だった。
逆境に陥った中年サラリーマンの復活物語
王崎ホームの芦溝良郎は、50歳を前に会社からリストラされた。再就職先を人材派遣会社から紹介されたが、どこも長く働くことが出来ない。予備校生の娘の手前もあって、いままで通りに家を出る毎日だった。ある日、公園のベンチに座った良郎は、ドングリ拾いをしている子どもを見て、自分も拾って調理してみる。「食えるのなら、食ってみようかな」。調理して食べられることがわかった良郎は、続いて野草の採取と魚釣りへと行動の範囲が広がった。食材を無料で入手して家で調理しながら、良郎が向かったのは、サラリーマン時代に食べていた弁当屋のいわくらだった……。
同じリストラ仲間の姿に元気づけられ、一度は途方に暮れた中年サラリーマンが、自らの夢を叶えて仕事を始め、おおいなる復活を遂げる。
逆境に陥った主人公を次第に応援したくなる、心温まる感動小説!
引用:楽天ブックス
良郎は弁当屋がやりたかったわけではなく、やってみたら意外と楽しかっただけ。
そしてそれがなぜかうまいこと世間に認められ、そのついでに家族にも認められただけ。
序盤の良郎はとにかく運や人との良いつながりに見放されているような人物だったにも関わらず、どんぐりを広い、食べてからはとにかく運がいい。
都合がよすぎると言ってしまえばそれまでだけど、トントンと読ませる筆力でそんなことは全然気にならない。
地震や大雨などの天災があるたびに、人間なんて地球にはどうやったって勝てないんだな、とまるで地球を敵のように感じてしまうこともあるけれど、本書を読んで、そもそも僕らは地球に生かしてもらっているということを思い出させてくれた。
野草を摘んで、魚を釣って、調理して食べて、そして販売して生きていく。
生きていくだけなら、販売する必要がないところまで書けたはず。
それでも、あくまで弁当販売という仕事を生み出すところまで書いたのは、作者が仕事というものが好きだからなんだろうな。
軽くてほどほどに感動もできて、良き小説。
ただ、残念な点は、王崎ホームに残った面々がどんどんと不幸になっていく図式はちょっと過多だったのではないかと思う。
良郎や古賀さんなんかにひどい仕打ちをしたことはわかるが、あそこまでひどい目に合わなくても、充分良郎との対比はできていたと思う。
良郎がそういう人物であるとは書かれていないが、他人の不幸を喜んでるような図式に見えてしまい残念。