面白いのか?と聞かれたらはっきりと「つまらない」と答える。
でも、「読んでみて」とは言いたい。
すごい作品。ものすごい作品。
同時に、しかも別々に誘拐された美貌の妻と娘の悲鳴がはるかに聞こえる。自らが小説の登場人物であることを意識しつつ、主人公は必死の捜索に出るが…。小説形式からのその恐ろしいまでの“自由”に、現実の制約は蒼ざめ、読者さえも立ちすくむ前人未踏の話題作。泉鏡花賞受賞。
引用:楽天ブックス
果たして本書はそもそも小説なのか。
ストーリーがあって、登場人物が入れば小説なのかもしれないが、本書はその2つが全く機能してない、と言っていいでしょう。
自分が虚構の世界の登場人物である、と自覚した登場人物。
時間的省略の無い(1ページで1分過ぎていく)文章。
自分が物語やフィクション、または夢の中などの登場人物であることを自覚するフィクションは他にもあるが、「虚人たち」は物語そのものが虚構であることを自覚しており、虚構であることを表現しないことで表現していたり、となんと言うべきなのかとにかくわからない。
小説という形式でしか存在しえない作品。
映像化が無理、なんてレベルじゃない。
筒井康隆にしか書けない作品なんだろう。
もしかしたら広い世界、どこかにこんな狂った脳みそを持った人も他にもいるとは思うが、その作品を、作者の意図から全くずれずに訳せる人などいないだろうし、そうすると僕にとっては筒井康隆しかいない。
前人未踏ではあるが、筒井康隆であれば、これだけの実験的で文学的な作品ももっと娯楽にもっていけたのではないか?という気持ちはある。
今またチャレンジして欲しい、というのが正直な感想だ。