お友達に薦められて。
何回も読み返してしまう本、ということで。
確かに何度でも読み返したくなりそう。
とても良き。
いまはなにもしていず、夜の散歩が習慣の19歳の私こと子、おっとりとして頑固な長姉そよちゃん、妙ちきりんで優しい次姉しま子ちゃん、笑顔が健やかで一番平らかな‘小さな弟’律の四人姉弟と、詩人で生活に様々なこだわりを持つ母、規律を重んじる家族想いの父、の六人家族。ちょっと変だけれど幸福な宮坂家の、晩秋から春までの出来事を静かに描いた、不思議で心地よくいとおしい物語。
引用:楽天ブックス
語り手は三女のこと子。
‘平らかな’心を持ったこと子から見た家族や恋人の深町直人のなんてことない日常。
とはいうものの、ペットの死や、長女そよちゃんの離婚、弟律の停学騒動など、大げさに(小説的・ドラマ的に)捉えることもできるような事件は起きる。
それでもやはり、こと子の視点から見た日常はとても’平らかな’もので、読む人によってはとても退屈な物語と思ってしまう人もいるだろうとは思う。
もともと、家族の物語というのはとても閉鎖的になりがちで(そこが家族の物語の大きな長所ではあるが、短所にもなり得る)、本書もとても閉鎖的で小さな世界の物語。
小さな世界で、小さな事件しか置きない日常でも、文章次第でここまで上質な小説になるんだな。
本当に素敵なシーンがたくさんあって、そういうシーン毎に
母の誕生日に、父がハムスターをプレゼントするシーンなんかは胸が苦しくなるくらいにロマンチックなラブシーンだし、停学のせいで卒業式に出られなくなった律がCDを3枚持ってこと子の部屋にやってくるシーンなんかは社会の理不尽さと家族のあたたかさ、律のまっすぐさがすごくよく表現された名シーンだと思う。
もちろん、4人の姉妹と弟がしゅうまいを作る場面なんかも、微笑ましくてついつい笑顔になってしまう。
そよちゃんの離婚が決まってマンションの片付けを手伝うシーンなんかは急な恐ろしさなどもあってとてもアクセントのあるシーンになっている。
宮坂家のみんな、みんながみんなとても素敵なんだけど、律がとてもいい。
なにせジェリーフィッシュ好きだしね。
江國香織がここまでいい作家だって知らなかったよ。
とてもとても良き。