表紙すごくいいですよね。
文庫本についていた帯、「読後、あまりの衝撃で3日ほど寝込みました…」というコピーも見事。
こういうのに騙されないように、って気をつけてるんだけど、どうしても気になっちゃう。
読了しての率直な感想として、3日ほど寝込むほどの衝撃は無い。
また騙された。
とにかく暗く、陰鬱とした小説なんだと思っていて、確かに暗いし胸糞悪い部分はあるものの、サクサクよめたし、絶望ばかりではなく、期待していたよりも明るい小説だったけど、思っていたよりも、楽しいという意味で面白かった。
読む前はよっぽどドロドロと陰鬱とした小説だと思っていたので、肩透かしを食らったような気持ちにはなってしまった。
それもこれも、全部帯が悪い。
田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は…筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。日本推理作家協会賞受賞。
引用:楽天ブックス
小説は田中幸乃への死刑判決の場面から始まり、傍聴に来ていた田中幸乃の人生に関わってきた数少ない人物が過去を振り返ることで、田中幸乃の人生を追体験していく。
この構成がとてもドラマチックでいい。
この他社の視点から見せることによって、物語が少し明るいものになっているんだと思う。
田中幸乃からの視点のみで語られていたら全く違った印象になっただろうな。
ただ、この構成のせいで、どうして田中幸乃がここまで「死にたがり」になってしまったのかがわからないのと、警察が無能さがいくらなんでもひどすぎる、という2点が多少気になる。
最後、田中幸乃が桜の花びらを大事に握りしめている。
それが生への執着にならないのが理解できない。
田中幸乃を必要としている人間が存在しているということが理解できないほどのバカだとは思えない。
なのに、生への執着が全然わかないのが理解できない。せめて分かりやすい葛藤くらいは描くべきだったのでは。
理解したくない。
それか、せめて最後に後悔してほしかった。
田中幸乃の自分自身の選択を後悔してほしかった。
そんな風に、考えさせられてしまうほどには、僕も田中幸乃の人生に関わってしまった。