芥川賞作家の田中慎弥の掌編集。
面白そうな雰囲気はあるものの、ここに描かれているメタファーや突如ぶっこまれる不穏な言葉などが消化しきれなかった。
長編だったらまた違う気もするけど。
他のも読んでみようかな、とは思うものの正直苦手意識はついてしまった。
自殺と断定された妻を、自分が殺害したと主張する男。夫の浮気相手たちを殺す計画を立てる貞淑な妻。育児疲れの女に若い頃の自分を重ねる老婆。会社帰りに立ち寄ったバーで悪魔と隣合わせになった男。愚かで愛らしいその人々は、あなたのすぐ近くに存在するかもしれない―。何気ない日常生活が些細なことで歪みはじめる瞬間を、ブラックユーモアたっぷりに切り取った38編の掌編小説集。
引用:楽天ブックス
突如反転する世界観や、突如打ち切られる物語。
物語を描いているというよりはシーンを描いている。
その一場面だけを見て、何を思うのか。何を見つけるのか。
それらの解釈は読者に委ねられている。
表現とは自由であり、ルールは無い。
とても自由に書いているような印象はあるものの、何かに掴まれているような、居心地の悪さが心地よい。
今作を読んで、バリーユアグローの「一人の男が飛行機から飛び降りる」を思い出した。
あっちの方がすんなり受け入れられた。
僕はきっと田中慎弥とは仲良くなれないタイプだと思う。
芥川賞を「もらっといてやる」なんて言えてしまうようなハートの持ち主だし、僕とはとても遠いところにいる人なんだろうな。