豊島ミホ大好きなんだ。僕は。
人間もとても魅力的に描いてくれるし、情景も美しい。
そしてなにより、とても力のある一節を書くことのできる作家。
そんな豊島ミホの連作短編集。よき。
連作短編集と言うよりは群像劇。
中学2年のとあるクラスの男女20人の恋に対するあれこれ。
それはとても不器用で、まっすぐでキラキラしてて、苦くて甘い。
思春期まっさかりの中学2年×20人、男女それぞれの“ままならぬ想い”を描く連作短篇全20話。一口に片思いと言っても、その想い方はさまざま。10代ならではの不器用なアプローチに胸が熱くなること必至。カップルであってもお互いの気持ちにすれ違いが生じていたり…。巻末に、20人の想いの方向が見える“恋の相関図”付き。
引用:楽天ブックス
豊島ミホはとてもファンタジックな物語からリアルな物語まで書ける作家で、それが豊島ミホ自信が悩んだ「使いやすい作家」ってことなのかもしれないけれど、少なくとも僕にとって豊島ミホの書く小説は、豊島ミホの作る物語は、豊島ミホから発せられる言葉は、豊島ミホからしか生まれてこないものだと思う。
憧れてしまうようなキラキラした部分や、目を背けたくなるような濁った部分、今になったからいい思い出にできるような青臭い部分など、誰もが持っている(持っていた)のに、うまく言葉にできなかったり、表現に消化しきれない部分を小説という形で僕たちに叩きつけてくる。
柔らかい印象なのに、ガツンとくる。
文体なんかは割と鋭かったり、言いづらいことをしっかりと宣言してしまったり、そういう所にはとても文学も感じるし、もちろん娯楽小説としての側面も感じる。
本書では中学生の男女20人の初恋を描いてるんだけど、恋した相手の表面しか見えていなかったり、内面まで気づいていたり、当たり前だけど様々。
そして何より素晴らしいのは、相手の表面しか見えていないことを悪いことだとも、もちろん幼稚だとも書いていない。
表面だろうがなんだろうが、その人の魅力であることには違いないんだし。
こんな当たり前のことを当たり前のように書ける作家は貴重だ。
女性の向けの作家のイメージがあるけど、誰にでも勧められる作家の1人だと思うんだけどな。
豊島ミホはとても力強い一節を書ける貴重な作家の1人。
本書でも、最高の一節が。
つまんないのでピアスを開けた。右耳にひとつ。
中学生の閉鎖された世界にうんざりし始めた感覚や、大人への憧れやら反抗心やらが全部ごちゃまぜになった一節。
本当に美しくて、力強い。苦くて、甘い。
最高によき。
浅野いにおの表紙も贅沢で良き。