2014年版「このミステリーがすごい!」の大賞作品。
そう聞くとミステリー、しかも法月綸太郎らしいミステリーを期待してしまう。
裏切られた。僕は裏切られた。
いい方向に。
とてもよき。
そもそも、これはミステリーなのか?
海外の古典ミステリネタをたくさん盛り込んだSFなので、海外古典ミステリを触りだけでもカバーしていないと、楽しめないかもしれない。
そういう意味では、とても同人誌的な中編集。
SFファンがどういう判断するかわからないけど、SFファンではない僕は最高に楽しかった。
上海大学のユアンは国家科学技術局からの呼び出しを受ける。彼の論文の内容について確認したいというのだ。その論文のテーマとは、イギリスの作家ロナルド・ノックスが発表した探偵小説のルール、「ノックスの十戒」だった。科学技術局に出頭したユアンは、想像を絶する任務を投げかけられる…。発表直後からSF&ミステリ界で絶賛された表題作「ノックス・マシン」、空前絶後の脱獄小説「バベルの牢獄」を含む、珠玉の中篇集。
引用:楽天ブックス
収録作品の全部がSFというわけではなくって、あくまで海外古典ミステリをネタにした中編集なんだけど、「引き立て役倶楽部の陰謀」以外はSF的要素がとても強い。
そしてそのSF要素が強いものがとても良かった。
ノックスの十戒の第五項に焦点を当てたタイムトラベルもの。
「No Chinaman」を中国人と登場させてはならない、ではなく、No Chinamanが必要。と読み解く視点がすでに面白い。
言葉遊びの面白さ。屁理屈の面白さ。
探偵ってこうでなくっちゃ。
オチはとても綺麗。
SF素養のない僕にはSF的部分はやはり難しく感じるけど、そこらへんは流し読みでも充分に楽しめる。
気になって調べたんですけど、アガサ・クリスティ失踪事件って本当にあった話だったんですね。
詳しくはWikipediaへ
そこから着想を得たメタミステリ。
非常にメタフィクションとしてネタ小説かと思いきや、突如フーダニットに。
もちろん解決もメタメタ。
SFメタフィクション。筒井康隆的実験小説と思ってしまうのは、僕にとってSFと言えば筒井康隆だから。次点で小川一水。
本書の中でこれが一番好きな作品だった。
ワームホールに中黒や半濁音などが使われなかった理由なんかはとてもくだらなくていい。
読者への挑戦状を特異点に持って来た作品。
「シャム双子の謎」には読者への挑戦状が無い。というエピソードを知らなかったので、ちょっとのめり込めなかったのが残念。
古典ミステリもちゃんと読まねば。
この作品がミステリの賞を取るのに少し違和感を感じるけど、ミステリ要素がある小説で面白いもの、って言ったらとても納得ができる。
ジャンルわけとはくだらないものかもしれない。という当たり前のことを思いつつ、何かを分類していくのも確かに楽しいからな。
まぁ、賞とか個人が読む分には関係ないじゃないですか。
そういった意味ではめちゃめちゃいい中編集だ、これ。