多分初読みの西村京太郎。
初読みは良い評判をいくつも聞いたので「殺しの双曲線」で。
西村京太郎といえば、トラベルミステリーのイメージが強いですが、こういう本格ものもあるんですね。
本格ものでありつつ、社会派っぽい感じもあって意外と言っちゃ失礼ですが骨太。
トラベルミステリーに興味が持てなくて初めての西村京太郎作品でしたが、イメージ変わった。
まぁ、それでも今後もトラベルミステリーは読まないだろうけど。
冒頭で、作者から「メイントリックは、双生児であることを利用したものです。」と、いきなり宣言。
フェアと言うよりは読者を挑発しているかのような態度がすごくカッコ良い。
差出人不明で、東北の山荘への招待状が6名の男女に届けられた。彼らは半信半疑で出かけて行く。雪に埋もれ、幸福感に酔っていた彼らはやがて恐怖のどん底に突き落とされた。殺人が発生したのだ。しかも順々に……。クリスティ女史の名作「そして誰もいなくなった」に、異色の様式で挑戦する本格推理長篇。
引用:楽天ブックス
冒頭での、「メイントリックは、双生児であることを利用したものです。」という宣言。
そりゃ嘘ではないんですけど、メイントリック、というのは少し誇張されてしまっているかな、と。
と言うか、本格ミステリに求めてしまうような(実現できるのか?なんて思ってしまうような)大胆なトリックは無いです。
犯人が早川だと言うのも、遅くともホテルに家族がついた段階でわかるし、そこで被害者の顔が潰されていれば入れ替わりがあった=犯人は被害者(と思われた人物)の中にいる、と確定できてしまう。
でも、この顔が潰されていた・首が切られていた、ですぐに入れ替えを疑ってしまう癖無くしたいな。驚きが減ってしまうんだよな。
閑話休題。
そして、双生児のトリックというのも、小柴兄弟のことと見せかけての早川兄弟だったという、読者に対するトリックだし、犯人当てのためのトリックではなく、犯人だと看破されても罪に問われないトリックだった、というのはすごくトリックーでよきよき。
犯人の動機は社会派っぽくてなかなか好きなんですが、母の仇、何もしないことの悪、というのを知らしめたいのであれば、もっとわかりやすいヒントを出すべきだったのでは?とも思う。
そこら辺は本人じゃないとわからない世界といえばそれまでなんだけど少し納得できないのも確か。
ここで納得できる答えが描かれていたらもっともっと評価が上がったんだけどな。
矢部が実際に自殺だった点や、五十嵐を殺したタイミングの不自然さ、などミステリー的に弱い部分は多々ありますが、これまで西村京太郎という作家に持っていたイメージよりはすごくいい作品だった。
ラスト、自分の正義を貫いただけと思った犯人が、また別の罪を犯してしまっていたことにショックを受けるシーンがとてもよかった。
と、全体的にはとても楽しく好きな1冊になった。
それでも、トラベルミステリーには興味が持てないので、これからも読むつもりは無し。
電車とかわかんないんだもん。
時刻表とかわかんないんだもん。