かわいい表紙でかわいい双子の物語。
それだけなんだよな。
大人から見た子供の物語。
いまいち楽しめなかった。
小春と日和。三月生まれなのにそう名付けられたふたごの姉妹。映画好きの母の影響で始めたタップダンスに、幼いふたりは夢中になる。そんなある日、舞い込んできたケチャップのCMに出演したことで、彼女たちの周辺がざわめき始める―。海辺の町・逗子を舞台に、少女たちの成長を伸びやかに描くハーモニー豊かなノスタルジック・ストーリー。
引用:楽天ブックス
物足りない。とにかく、物足りない。
「なんてことない」日常を描きたいのだとは思うが、それにしては芸能界デビューという、派手な出来事が物語の軸になっている。
こんな派手な出来事を軸に持ってくるのであれば、主人公や、周りの登場人物に成長や退化(つまり変化していく過程や結果)が見えてこないと、テーマとの辻褄が合わないんじゃないかな。
そもそも、芸能界云々で一番ページを使っているんだけど、作者が描きたかったのはそこなのか?
もっと、日常の一日一日を大事に描くべきでは?
特に小学生にとっての一日というのは、もっともっと重要なものであったはず。
あくまで大人が思う、子供ってこういうかわいいものなんだけど、意外と大人なんですよ。って思惑で描かれているキャラクターのように感じた。
何より重要なキャラクターである、吉田くんの出番が遅いことと重要なはずなのに出番が少ないことがもったいない。
こんな中途半端な登場をするのであれば、登場させない方がよかったと思う。
読んでいる途中、「残りページ少なくなってきたのにこんなに良さそうなキャラクターが今頃出てくるの?」と驚いた。
確かに、小春と日和の人生はこれからも続いていき、その後、吉田くんとの関わりがどんどん深くなっていくのかもしれないけど、小説というのはどこかで区切りをつけなければいけないものであるのだから、エピソード、キャラクターの取捨選択は慎重にしてほしい。
吉田くんとのやりとりや、吉田くんと長沼さんとの関わりなどをもっと深く突っ込んでいったら、全然違った印象になったと思う。
舞台である1975年ごろに、小学生だった人や大人だった人はまた違った印象を持つのかもしれないけど、自分にとってはとても退屈な小説だった。
ただ、お父さんとお母さんのデートの話と、双子と桜井先生のデートの話はよかった。