単行本時には「チェインドッグ」というタイトルで、文庫本化するにあたり「死刑にいたる病」と改題。
読了してみると改題は成功してると思う。
連続殺人鬼というキャラクターをどれくらい魅力的に書くのか、そもそも魅力的に書いてしまっていいのか。
そこらへんのさじ加減難しいよね。
鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也(かけいまさや)に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人鬼・榛村大和(はいむらやまと)からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」地域で人気のあるパン屋の元店主にして、自分のよき理解者であった大和に頼まれ、事件の再調査を始めた雅也。その人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也はなぜか大和に魅せられていき……一つ一つの選択が明らかにしていく残酷な真実とは。
『チェインドッグ』を改題・文庫化。
引用:楽天ブックス
本書「死刑にいたる病」で出てくる連続殺人鬼榛村大和は、知能も高く、ルックスもよく、人を支配する力も持っている。
という、言ってしまえばフィクションの世界では割とよくいるタイプの悪人。
だが、少なくともこの作品内の描写だけでは、そこまでの魅力は感じることは出来ない。
魅力的な悪役をきちんと魅力的に描く、というのはそれだけで物語が面白くなるので、その点は少し残念。
「最後の一件だけは冤罪だ」と述べる榛村の依頼で真犯人を探す雅也。
という構図はとても良き。
悪人と言えども、何でもかんでも自分のせいにされることは納得がいかないという人間らしさが見える。
榛村はなぜ、雅也を選んだのか?本当に冤罪なのか?冤罪だとしたら真犯人は誰なのか?
などの謎を引っ張りつつ、調査を続けるうちにだんだんと成長していく雅也。
冤罪の謎と雅也の成長物語の2軸で進んでいき、物語に入り込まされていく。
榛村の出生の秘密なんかも深掘りしていきながら、調査は進めていく雅也。
確かに榛村は不幸な人物であるが、それでもやはり人を殺す、というのは許されることでは無い。
しっかりとそういう台詞も入れてあり、わざわざ言うことではない、という意見もあるかもしれないが、あえてストレートな台詞を入れてくる点はとても好印象。
ただ、このストレートな感覚のせいで榛村がそこまで魅力的に描き切れていないのかもしれない。
調査が進んで行くと、雅也の母親もどうやら?となっていくところがピーク。
そこの真相については正直肩透かし。
ここは、うまいこと描き切ってほしかったな。
シリアルキラーに惹かれてしまうのは、羊たちの沈黙のせいというかおかげというか。
やはりハンニバル・レクターのキャラクターはかっこいいもんな。
プロローグとエピローグがとても思わせぶりでよき。