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北山猛邦「私たちが星座を盗んだ理由」

先生、大事なものが盗まれました」以来の2作目となる作家。
珍しいWhat?ダニットものだった「先生、大事なものが盗まれました」もすごく楽しかったんだけど、「私たちが星座を盗んだ理由」も、全然違った雰囲気、設定なんだけどすごくすごく楽しかった。
とてもよき。

ファンタジックな表紙とロマンチックなタイトルに騙された。
「ミステリの醍醐味」が確かにここにあった。
短編集ではあるものの、長編にしてもよかったんじゃないか?ってものもあり、濃い1冊。

あらすじ

優しく、美しく、甘やかな世界が、ラストの数行で、残酷に崩壊する快感。景色が反転し、足元が揺らぎ、別な宇宙に放り出されたかのような、痛みを伴う衝撃。かつて、まだ私たちが世界に馴染んでいなかった頃の、無垢な感情を立ち上がらせてくれる、ファンタジックな短編集。ミステリの醍醐味、ここにあり!
引用:Amazon

  1. 恋煩い
  2. 妖精の学校
  3. 嘘つき紳士
  4. 終の童話
  5. 私たちが星座を盗んだ理由

の5編からなる短編集。

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ネタバレありの感想

恋煩い

その性質のため、あまりミステリーでは扱われないプロバビリティの犯罪もの。
犯人が偶然性に頼って人を殺めたい、というのが物語として弱くなるし、結局偶然で死んでしまったことにより、ミステリとしてアンフェアな印象を与えてしまいがちなんだろう。
だけどこの短編では、瓶のストラップから出てくる1枚の紙に書かれた「死ね」の文字で明確な殺意を感じることができて、恐ろしくなった。

妖精の学校

ファンタジックなんだけど、そこまで非現実的な感じを受けない設定で物語は進む。
最後の一行
「20° 25′ 30″ 136° 04′ 11″」
は座標だとなんとなく想像がつく。
検索してみると、沖ノ鳥島という小笠原諸島にあるサンゴ礁からなる島だそう。

干潮時には環礁の大部分が海面上に姿を現しているが、満潮時には礁池内の東小島(旧称・東露岩)と北小島(旧称・北露岩)を除いて海面下となる。
引用:Wikipedia

この、東小島、北小島がそれぞれ東の虚、北の虚なのだろう。

「その場所は何処にも属さない!」と書かれたメモはどこの国の人がバラまいたのか、妖精の学校の子供たちはどこから連れてこられたのか、などなど考えると、鬱々と気持ちになる。

こういうのもイヤミスって言うんだろう。

嘘つき紳士

ラスト近辺がキョーコにとって都合がよすぎるように動いてしまった気はしますが、全体的に緊迫感があり、見事。

終の童話

素晴らしい。
こんなに濃い物語を短編集で読むことがもったいないし、とても贅沢。
”石像を元に戻す順番を繰り上げるため”という動機がすぐに思いつくものの、これまでの短編から考えると簡単すぎる、と思ってしまう。
そこで現れる、ジャックネッタという偽の犯人。
ここまでされたらそりゃ、騙される。
ファンタジーな世界での慈悲による殺人。と、とても綺麗に”探偵=犯人”をやられた。
読み返してみると、きちんと伏線も張ってあり気づけても良さそうなもんだけど、このファンタジーな空気感でまた気づくことが難しくなっている。
結末で、ウィミィがが杖を使ってエリナの石像を壊したのか、瓶を使ってエリナを元に戻し(殺し)たのか、どちらも使わずに石像と共に暮らすことを決めたのか、僕たちは想像するしかなくて、リドルストーリーとなっている。

私たちが星座を盗んだ理由

表題作。
すれ違いの物語。
とても切ない。
それぞれがそれぞれを思い合っていたのにも関わらず、信じきれていなかったり、環境や自身の嫉妬のせいですれ違ってしまった3人。

ミステリーとしては、どうやって星座を消したか?が知識がないとどうしようもないもので、そこは残念。
それでも、とてもいい、よく練り上げられた短編だと思う。
この設定を、よくあるラブロマンスにしない潔さ、よき。

2018年 年間ベスト

  1. 西加奈子「ふる」
  2. 鳥飼否宇「死と砂時計」
  3. 宮下奈都「羊と鋼の森」
  4. 筒井康隆「朝のガスパール」
  5. 北山猛邦「私たちが星座を盗んだ理由」
  6. 天祢涼「キョウカンカク 美しき夜に」
  7. 井上真偽「その可能性はすでに考えた」
  8. 井上真偽「探偵が早すぎる」
  9. 瀬川コウ「謎好き乙女と奪われた青春」
  10. 竹本健治「涙香迷宮」
  11. 下村敦史「闇に香る嘘」
  12. 中村文則「何もかも憂鬱な夜に」
  13. 筒井康隆「ロートレック荘事件」
  14. 本谷有希子「グ、ア、ム」
  15. 野村美月「文学少女と繋がれた愚者」
  16. 野村美月「文学少女と慟哭の巡礼者」
  17. 深水黎一郎「ミステリー・アリーナ」
  18. 野村美月「文学少女と月花を孕く水妖」
  19. 深水黎一郎「テンペスタ 最後の七日間」
  20. 北山猛邦「先生、大事なものが盗まれました」
  21. 伊坂幸太郎「仙台ぐらし」
  22. 辻村深月「盲目的な恋と友情」
  23. 法月綸太郎「ノックス・マシン」
  24. 辻村深月「鍵のない夢を見る」
  25. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  26. 野村美月「文学少女と穢名の天使」
  27. 伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」
  28. 辻村深月「ハケンアニメ!」
  29. 東野圭吾「仮面山荘殺人事件」
  30. 有栖川有栖「46番目の密室」
  31. 青崎有吾「体育館の殺人」
  32. 下村敦史「生還者」
  33. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  34. 東野圭吾「鳥人計画」
  35. 木内一裕「デッドボール」
  36. 佐藤友哉「子供たち怒る怒る怒る」
  37. 森絵都「カラフル」
  38. 井上荒野「あなたの獣」
  39. 東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」
  40. 岡嶋二人「そして扉が閉ざされた」
  41. 東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」
  42. 櫛木理宇「死刑にいたる病」
  43. メグ・ガーディナー「心理検死官ジョー・ベケット」
  44. 瀬尾まいこ「おしまいのデート」
  45. 竹宮ゆゆこ「あしたはひとりにしてくれ」
  46. 伊坂幸太郎「火星に住むつもりかい?」
  47. 西澤保彦「殺す」
  48. 東野圭吾「放課後」
  49. 長江俊和「出版禁止」
  50. 東川篤哉「密室の鍵貸します」
  51. 倉知淳「星降り山荘の殺人」
  52. 東野圭吾「十字屋敷のピエロ」
  53. 西村京太郎「殺しの双曲線」
  54. 秋吉理香子「暗黒女子」
  55. ネレ・ノイハウス「深い疵」
  56. 折原一「覆面作家」
  57. 恩田陸「木漏れ日に泳ぐ魚」
  58. 法月綸太郎「雪密室」
  59. 大石圭「人を殺す、という仕事」
  60. 瀬尾まいこ「温室デイズ」
  61. 浜口倫太郎「22年目の告白-私が殺人犯です-」
  62. 相沢沙呼「午前零時のサンドリヨン」
  63. ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」
  64. 綾辻行人「どんどん橋、落ちた」
  65. L・M・モンゴメリ「赤毛のアン」
  66. 首藤瓜於「脳男」
  67. 西澤保彦「麦酒の家の冒険」
  68. 青柳碧人「西川麻子は地理が好き。」
  69. カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ「犯罪は老人のたしなみ」
  70. 野中柊「小春日和」
  71. 原宏一「床下仙人」
  72. 島田荘司「斜め屋敷の犯罪」
  73. 折原一「耳すます部屋」
  74. 七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」
  75. 鯨統一郎「邪馬台国はどこですか?」
  76. 木下半太「鈴木ごっこ」
  77. 高木敦史「演奏しない軽音部と4枚のCD」
  78. 遠藤武文「トリック・シアター」
  79. 伊原柊人「隣人の死体は、何曜日に捨てればいいですか?」
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Book | 2018年7月25日