折原一は信頼できるミステリー作家の一人だと思っていた。
そんな折原一の短編集。
本書「耳すます部屋」、正直な感想としては物足りない。
娘の同級生を放課後預かることになった久恵。だが母親同様ずうずうしい小学生ゆかりには、盗癖があった。結婚指輪までが消えた日、包丁を手に、久恵はついにキレてしまう。「ゆかりが帰ってこない」、その夜、鳴り続ける母親からの電話。どこまでも執拗に―。日常の恐怖に彩られた叙述ミステリー10の傑作。
引用:楽天ブックス
あらすじには「叙述ミステリー10の傑作」と書かれているが、意外な犯人ではあるが、叙述ミステリー(つまり、折原一)を期待すると、物足りない。
「折原一と言えば叙述トリック」という期待をしていなかったとしても、叙述的な驚きは少ないんじゃなかろうか。
短編で、叙述トリックを綺麗に書こうと思うと難しいのかな。
いくつかの感想をば。
これは、神戸のあの事件が基になっているのは間違い無いんだけど、あの事件に対して別の解決を提示されたことは、正直不快に思ってしまった。
それだけ、僕にとってあの事件は衝撃的なものだったし、目を背けてはいけないことなのだと思う。
これも、実際の事件を基にしているんだろうけど、こちらにはそんな不快な思いをしなかった。
思い入れ、という言葉が正しいのかわからないけど、そういうことだろう。
ミステリーではなくホラー。
この短編集で一番、というか唯一いい作品。
折原一のホラーはちょうどいい怖さだ。
ホラー好きな人にとってはどうなんだろう。
表題作で、割といい雰囲気で始まったんだけど、久恵がどうして、娘に対してゆかりちゃんを殺してしまったかのような言い方をしたのか、が全く理解できない。
キレちゃってたとか、ストレスとかじゃ納得できない。
相手は娘だよ?勘違いさせるわけない。
これは、正直最初からひどい。
時系列を錯覚させたかったんだろうけど、明確な表記をしていないだけで、ただわかりづらいだけ。
二宮の存在もなんだったのか・・・
夫を殺した妻が、目撃者を殺害するために、目撃者に懸賞金を払うと言って目撃者探しをする話。
もちろん、叙述トリックとして、妻が夫殺しの犯人というのは最後の方まで明かされない。
これ、叙述トリックとか無しで普通にサスペンスものにしたら面白くなりそう。
その方が緊迫感が出てよかったんじゃなかろうか。
折原一でもいまいちなものはあるんだ、ってわかった。
残念。