「その可能性はすでに考えた」がただのキャラクター小説じゃなくて、本格ミステリとしてすごくすごくよくて他のも読みたいと思って上下巻のこれを。
「その可能性はすでに考えた」よりもキャラクター小説が強まってして思ったんだけど、キャラクター小説としてもすごくいい。
ミステリとしても、とても興味深く、楽しい、両方の意味で面白かった。
「俺はまだ、トリックを仕掛けてすらいないんだぞ!?」完全犯罪を企み、実行する前に、探偵に見抜かれてしまった犯人の悲鳴が響く。父から莫大な遺産を相続した女子高生の一華。四十九日の法要で、彼女を暗殺するチャンスは、寺での読経時、墓での納骨時、ホテルでの会食時の三回! 犯人たちは、今度こそ彼女を亡き者にできるのか!?百花繚乱の完全犯罪トリックvs.事件を起こさせない探偵!
引用:楽天ブックス
「人が死なないミステリ」ではなく「人を死なせないミステリ」
探偵とは起こった事件を解決するものなんだけど、「探偵が早すぎる」に出てくる探偵光は事件が起きる前に解決してしまうという、アンチ探偵小説と呼べる小説。
古今東西の名探偵と呼ばれる方達も犯人が迂闊に漏らした一言から犯人の目星をつけたりしていて、やっていることはそれと同じ。
ミステリでは犯人はミスをするものです。それは確実に。
そこに気づき、想像を働かせ犯人まで辿りつけるのが探偵なんです。
それに比べて、光はタイトルにもある通り、早すぎる。
トリックの準備段階や仕掛け途中での、不自然さに気づけてしまう、洞察力もすごいけど、そこからの妄想とも呼べるほどの想像力がすごい。
人は死なないものの、犯人たちはかなりの悪役たちで、罪もない女子高生である一華をしっかりと殺そうと、それもかなり不快な方法もあり、未読時の想像よりも緊張感もあってよかった。
一華のとてもいいキャラで、もちろん一華や家政婦の橋田もいいキャラで、エンタメ作品として素晴らしく楽しい。
大好きだ。橋田。