重い。
重めなライトノベルこと”文学少女”シリーズですが、中でも今回は重い。
ライトノベルで扱いづらいテーマだと思うんだけど、きっちりと逃げずに描き切っていてすごいですよ。
今巻のモチーフはガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」
読んだことないけど内容をなんとなく知っている話ベスト10には入るお話だ。
そもそも「オペラ座の怪人」は読むべきものなのか、映像で見るべきなのか、舞台で見るべきなのか。
そんなことも決められないままだ。
今回遠子先輩の活躍は少なめ、その分琴吹ななせちゃんががんばってくれる。
あぁ、かわいい。
文芸部部長、天野遠子。物語を「食べちゃうくらい」愛しているこの“文学少女”が、何と突然の休部宣言!? その理由に呆れ返りつつも一抹の寂しさを覚える心葉。一方では、音楽教師の毬谷の手伝いで、ななせと一緒に放課後を過ごすことになったりと、平和な日々が過ぎていくが…。クリスマス間近の街からひとりの少女が姿を消した。必死で行方を追うななせと心葉の前に、やがて、心葉自身の鏡写しのような、ひとりの”天使”が姿を現す―。
引用:楽天ブックス
遠子先輩が受験のため部活を休む。
そのせいで遠子先輩の出番が少ない、とかよりも物語がちゃんと卒業に向けて進んでいることに気付いてしまってショック。
卒業と同時に物語が終わるのか、小説が終わるのか、どちらにせよどこかで区切りがついてしまうのが、フィクションの寂しいところだしいいところだ。
琴吹ななせちゃんかわいい回。
琴吹さんと心葉の出会いのエピソードなんかもとても胸キュンものだし、とてもラノベ的。
すっかり忘れていた琴吹さんとの初めての出会いを、パンチラで思い出すってあだち充かよ。(あだち充の作品にこんなエピソードがあるのかどうかはわからないけど)
琴吹さんがなぜ心葉に惚れたのか解明されつつ、美羽とのつながりもうっすらと出来ていて、伏線として効いている。
琴吹さんがかわいいぶん、友達の夕歌ちゃんのエピソードが悲しすぎる。
援助交際なんて題材をライトノベルで書くって難しいだろうに。
変に文学的にもせず、変に遠ざけもせず、理解しているフリもせずに書かれている。
女性作家だからこそ、なのかな。
臣くんの立ち位置が見事で、一見誰からも嫌われることのない心葉をきちんと憎む人が出てくる(和解するとしても)、というのはシリーズの今後にも繋がっていく部分だ。
誰からも嫌われない聖人君子など魅力がない、
「死にたがりの道化」からそうだけど、結構人死にがあったんだな。
命を使って感動させよう、ってわけではなく、人生が後戻りが出来ないことの象徴として人がいなくなっているんじゃないかと思う。
そうすると、まだ生きている心葉や美羽、千愛ちゃんなんかにはまだ希望がある。
そこが若年層向けの物語として正しい姿な気がするよ。