倉知淳は初めてかな。
読みたいと思って、何冊か積ん読したまま。
どこかで「星降り山荘の殺人はイイゾ!」というのを聞いたのをきっかけに読んでみた所、確かにすごくよかった。
雪に囲まれた密室、下界と隔離された山荘、連続殺人、見取り図、読者への挑戦状。
とミステリ好きなら喜ぶアイテムがてんこ盛り。
すごくよかった。
あと、頭の悪い女子大生ってのも本格ミステリっぽくて笑ってしまった。
現代でこういうキャラクター書きすぎると問題になりそう。
嫌な時代だ。
雪に閉ざされた山荘。そこは当然、交通が遮断され、電気も電話も通じていない世界。集まるのはUFO研究家など一癖も二癖もある人物達。突如、発生する殺人事件。そして、「スターウォッチャー」星園詩郎の華麗なる推理。あくまでもフェアに、真正面から「本格」に挑んだ本作、読者は犯人を指摘する事が出来るか。
引用:楽天ブックス
こういう形の叙述トリックは珍しいんじゃないだろうか。
いかにもヒントっぽい作者からの注意書きが、随所に挿入され、それ自体が読者に対するミスリード。
登場人物がいかにもなんですよね。
いかにも本格ミステリっぽいキャラクターたちで構成されており、それこそキャラクターがそれぞれの役割を演じているかのような、設定。
よく言われる、2時間ドラマでの「豪華な俳優が犯人役」みたいなメタ的な推理を逆手にとったミスリードで、僕は見事に騙されました。
星園詩郎がいい。
すごくいい探偵キャラなんだよね。
スタウォッチャーとかいう変わった職業、同情すべき過去、優れた洞察力と想像力、そして美形。
探偵としてこれでもないくらい魅力的な条件を持っている。
このシリーズ物にもできそうな、魅力的なキャラを犯人役として捨ててしまうとは。
その点、本当の探偵役であった麻子のなんと魅力の薄いことか!
主人公が惚れることによって女性として魅力的には写ってはいるが、探偵としては全く魅力なし!
この主人公が惚れる、というところも上手い。
主人公が惚れたことによって、マドンナという役割を与えられているように見える。
それこそシリーズものとして、段々和夫との距離が近づいていくのかな、と見えて、まさか探偵役だとは。
とにかく、星園詩郎という名キャラクターを使い捨てたことが英断だと思う。
こういう裏切られ方は気持ちのいい裏切り、とは思えないけど見事に裏切られたのは確か。
傑作。