恩田陸が「蜂蜜と遠雷」で直木賞と本屋大賞をW受賞しました。おめでとうございます。すごい。
ただ、どうなんでしょうね、W受賞っていうのは。
「蜂蜜と遠雷」がそれだけ素晴らしい本なのかもしれませんが、直木賞と本屋大賞は別々の本が受賞したほうが出版界にとってはいいのではないでしょうか。
そんな恩田陸の結構前の作品「木漏れ日に泳ぐ魚」
やけに本屋で平積みされてたけど、映画化か何かされるのかな?
舞台設定が面白そうで購入。
まず率直な感想としては、面白かった。かなり面白かった。
恩田陸はあんまり読んで無い作家さんだけど、得意としているであろう会話劇。
元恋人同士であった2人が最後の夜に語り合ううちに明らかとなる真相。
舞台は、アパートの一室。
別々の道を歩むことが決まった男女が、最後の夜を徹し語り合う。
初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿――共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。
濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。
不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編!
引用:楽天ブックス
基本的には面白かった。
特に序盤。
お互いがお互いを男を殺したのは相手だと疑っている、という関係性すごくゾクゾクした。
どうやら恋人としての関係も終わり、その最後の夜に夜通し語り合い、男の死について何かが明らかになるんだろう、という雰囲気や、どうやらこの2人は普通の恋人同士ではなさそうだし・・・
2人の会話から少しづつ当時の風景が見えてきて、死亡したタイミングなんかが見えてくる。
ただ、アキの方が当時ぼーっとしていていまいち覚えてない、という部分はすごく興ざめで残念に思ってしまった。
そこで気づいたんですけど、これミステリーじゃないんだね。
不穏な空気や、事件のせいでミステリーかと思って読んでいたんだけど、それがそもそもの勘違いだった。
一人の男の死によって関係が変わって(終わって)しまった2人の男女の恋愛小説なのね。
恋愛まで発展できなかった、発展させられなかった2人の。
恩田陸は途中に急に詩的なシーンを入れてくるイメージがあって、この本でもそう。
でも、それがそんなにわざとらしく見えないのは、全編通して少しだけ現実から浮遊しているような世界観だからなんだろうな。
この世界観の作り方、本当に見事で心地よい。