すごいの出てた!
面白いと聞いていたものの、講談社ノベルスの時には表紙に惹かれず。
文庫化されてすごくいい表紙になったので悩むことなく購入。
大好きなメフィスト賞出身なんだから好きに決まってた。
一見するとアンチミステリ的な小説ではあるのですが、「アンチ=否定」という感じはなく、すごく真っ当にロジカルなハウダニットもので、アンチミステリの皮をかぶった本格ミステリでした。
青髪でオッドアイで赤いコートを着た探偵。
と、ここまで異様な外見にする必要があったとは思えないが、奇蹟を信じる探偵という異常な内面を持つ探偵にはふさわしい外見なのかもしれない。
ま、その外見が表紙だったおかげでノベルス時にはスルーしてしまったんだけど。
山村で起きたカルト宗教団体の斬首集団自殺。
唯一生き残った少女には、首を斬られた少年が自分を抱えて運ぶ不可解な記憶があった。
首無し聖人伝説の如き事件の真相とは?
探偵・上苙丞(うえおろじょう)はその謎が奇蹟であることを証明しようとする。
論理(ロジック)の面白さと奇蹟の存在を信じる斬新な探偵にミステリ界激賞の話題作。
引用:楽天ブックス
そもそもの設定からして最高すぎる。
不可能状況で起きた過去の事件を「奇蹟」であったことを証明するため、探偵が全ての可能性を否定する、というもの。
そして、その探偵に敵対するのはその事件を「奇蹟」でなかった(かもしれない)可能性を示すため、とても魅力的な解決を提示してくる。
魅力的な解決は時として非現実的すぎるわけだけど、この小説では現実的である必要は全くないため魅力的な解決が魅力的なまま読者に提示される。
3人の刺客からそれぞれ、凶器消失トリック、死体移動トリック、入れ替わり(アリバイ)トリックという3つのバカミス的と言えるくらいの思い切った解決が出てくる。
バカミス的といえどもとてもロジカルで、非現実的に見えても一応は筋が通ってしまっていて、それに対して主人公の上苙はロジカルにその解決を否定していく。
推理が覆される、新しい快感が楽しい。
特に凶器消失トリックでの、「12」という数字から家畜の数を確定する様は本当に見事。
そして、3つの解決に対して3つの否定が示された所で、黒幕のカヴァリエーレ枢機卿による「3つの否定の矛盾」を指摘されるという心踊る展開。
黒幕のくせにやけにあっさりと負けてしまったのは残念ですが。
続編もすでに出ているようなので早く読みたいです。