最近だんだん分かってきた、新潮文庫nexはとても素晴らしいレーベルだ。
とはいうもののまだ、何作かしか読んでいないんだけど、そのどれもが素晴らしい。
「謎好き乙女と奪われた青春」も、期待を大きく上回る小説だった。
藤ヶ崎高校一の美少女、早伊原(さいばら)樹里は恋愛に興味がない。友情にも興味がない。もちろん、部活にも。彼女が愛してやまないこと、それは日常に潜む謎。衆目の中ですり替えられた花束。学年全員に突如送られた告発メール。教室の反対側からの不可能カンニング。やがて僕の過去が明らかになるとき、「事件」の様相は一変し……。彼女と「僕」が織りなす、切なくほろ苦い青春ミステリ。
引用:楽天ブックス
早伊原樹里は“THE キャラクター小説”という感じで、だいぶライトノベルよりのキャラクター。
「学園1の美少女で毒舌キャラな後輩」
あぁ、なんて素敵な響きだ。
矢斗春一は一見やれやれ系主人公なんだけど、達観しているわけではなく、自分の奪われた青春を諦めようとしているけれども捨てきれておらず、小さくとも、もがき続けている様が人間臭くてとてもよかった。
早伊原樹里のキャラクターがとてもステレオタイプなライトノベルのヒロイン然していて、その対比で春一の底がつかめない。そして、その底がつかめない春一が視点を担うのが不可思議で気持ちの良い違和感がある。
ミステリーとしてはまず、「誰にも気付かれずに花束を一瞬で入れ替える方法」「四列離れた席からカンニングする方法」など、人の死なない学園ミステリとして謎がとても魅力的。
そこに対して、春一と早伊原樹里がお互いに推理を披露するという多重解決もの。
トリックとしては、正直そこまで難しいものではなく、途中でなんとなくわかったりするが、そこに至るまでのやりとりやその後のエピローグ的な箇所がとても良い。
早伊原樹里がここまで「謎」に惹かれる理由なんかは今後明らかになっていくのかな。
まぁ、理由などなくとも「謎」に惹かれるというのは人間の本能の一つではあると思うんだけど、恋愛や友情といった他のものに興味を持てないことには何かしらの理由があってもよさそうな気がしている。
4巻出ていてすでに完結しているシリーズだそうで早く続きを読みたい。