密室ものが続きます。
初めての東川篤哉。
ユーモアミステリーかと思ってたらびっくりした。
しっかりと本格ミステリーだった。
と言うと、まるでユーモアミステリーが本格ミステリーよりも位が低い、というように見えてしまうけど、あくまでジャンルというか重きを置いている部分が違うじゃないですか。
ユーモアに重きを置いているのか、トリックに重きを置いているのか。
緊張を持続させていかなければいけない本格ミステリと緊張と緩和を繰り返すユーモアミステリ、相性が悪いはずなんですよ。
この本ではこのユーモアミステリというジャンル自体が読者に対する叙述トリックのようで、テンポの良い会話に引っ張られてスイスイ読んでいく(言葉悪く言うと油断している)とミステリ部分(ハウダニット・ホワイダニット)で驚きが。
こういう驚きを味わいたくてミステリーを読んでるのでうれしい。楽しい。大好き。
しがない貧乏学生・戸村流平にとって、その日は厄日そのものだった。彼を手ひどく振った恋人が、背中を刺され、4階から突き落とされて死亡。その夜、一緒だった先輩も、流平が気づかぬ間に、浴室で刺されて殺されていたのだ!かくして、二つの殺人事件の第一容疑者となった流平の運命やいかに?ユーモア本格ミステリの新鋭が放つ、面白過ぎるデビュー作。
引用:楽天ブックス
面白い。
元彼女の由紀の死に関しては完璧なアリバイがあるものの、それを主張すると、密室での茂呂の死に関しての最有力な容疑者となってしまうという、戸村の置かれる状況がとにかく最高。
最初はユーモアミステリとみせかけておいて、次に密室ものの本格だ!とみせかけておいて、アリバイトリックだった。という構成がとても面白い。
会話・文体だけでなく小説としてすごくテンポが良くて盛りだくさんな印象。
密室トリックは、外で刺され、自分の足でアパートに帰り鍵を締め「内出血密室」の完成というとてもシンプルなもの。
それでも全く残念では無いしそれどころか無理がなくて自然だな、と思わせてくれる。
ピスタチオの殻のくだりなど伏線というかヒントの出し方もとても自然なのは、全体的な文体のおかげ。
なにより、真相にたどりつくきっかけが「映画が面白かったから」と言うのが最高。
他ではなかなか無いんじゃなかろうか。
すごくよかったのでシリーズ含めて他の作品も読んでいこう。