「とんでもトリック」で有名な御手洗潔シリーズの2作目。
シリーズ1作目はあの大名作の「占星術殺人事件」なのに、2作目の本作はあまりに大胆なトリックで有名なあれ。
というか、バカミスです。
奇想天外さでは「占星術殺人事件」もかなりのものなのに、受け取る印象は真逆と言ってしまっていいくらい。
全体的な雰囲気や、テンポよく起こる事件など楽しいのに、あのトリックのせいで堂々たるバカミスに。
北海道の最北端・宗谷岬に傾いて建つ館―通称「斜め屋敷」。雪降る聖夜にこの奇妙な館でパーティが開かれたが、翌日、密室状態の部屋で招待客の死体が発見された。人々が恐慌を来す中、さらに続く惨劇。御手洗潔は謎をどう解くのか!?日本ミステリー界を変えた傑作が、大幅加筆の改訂完全版となって登場!
引用:楽天ブックス
小説中で、あからさまに怪しい人物がそのまま犯人となっており、フーダニット部分はすぐにわかるものの、ハウダニットがわからない。
わかるはずがない。
屋敷が斜めなのが重要だということもメタ的な推理によってわかるのに、肝心の方法がわからない。
奇想天外すぎるトリックだったり、屋敷の構造が複雑すぎてイメージがつきづらいせいだったりするんだけど、そこはフィクションだから納得しても、トリックに不確定要素が多すぎる点がどうしても納得できない。
せっかく仕掛けが大掛かりで、非現実的なんだからもっと確実な装置を作ってほしかったな、とは思う。
砲丸の密室トリックなんかはとても良くて、なぜ砲丸なんかがあるのか?そしてそれを誰も不思議に思わないのか?など疑問点はどうしても残ってしまうが、なるほど、と思える。
本書で一番納得できない点が、雪の足跡の隠滅方法。
「足跡が無い=密室」と言っておいて「屋根から雪を落として消した」は小説としてルール違反な気がする。それで通用するなら、「他から雪を持ってきて消した」や「以前降った冬を保存しておいて消した」なども可能になっちゃうよ。
奇想天外なトリックは基本好きなんだけど、やはり無理やりだとしても納得出来る説得力は欲しいな。
全体的な雰囲気なんかはすごくいいだけに残念。