「鈴木ごっこ」まずは秀逸なタイトルが目を惹く。
表紙からにじみ出る少し不気味な感じも小説の世界観をよく表していてタイトル含めていい表紙だ。
ただ、肝心の中身、小説としてはあっけなく終わってしまった感じ。
僕が個人的に木下半太がそこまでハマれないだけかもしれない。
気になる設定やタイトルの小説が多くて気になって何冊か読んでるけど、「めちゃめちゃ好き!」って作品はまだない。
「家族ごっこ」という、原作者である木下半太が監督やっているオムニバス映画があって、その1話として「鈴木ごっこ」も入っているよう。
あらすじ見てみると面白そうだから映画も見てみたいな。
「今日から、あなたたちは鈴木さんです」。巨額の借金を抱えた男女四人が豪邸に集められた。彼らの責務は、ここで一年間、家族として暮らすこと。見知らぬ者同士が「家族ごっこ」に慣れてきたある日、貸主から次なる命令が下った。失敗したら四人に未来はない―。貸主の企みの全貌が見えた瞬間、想像を超えた“二重の恐怖”がつきつけられる!
引用:楽天ブックス
読みやすい。とにかく読みやすい。
普段、読みやすさというのは、長所だと思っているんだけど、本書「鈴木ごっこ」に関しては、残念ながらそこが弱点になってしまっているのかもしれない。
読みやすいがゆえにそれぞれの小梅とダンとタケシとカツオの視点での違和感や矛盾点がすごくはっきりと見えてしまって、かなり序盤で「複数の家族(ごっこ)の話」か「時系列がずれている」か「複数の人間が嘘をついている」というのが見えてきてしまう。
最後の晩餐で小梅が自分以外の人間にカップラーメンを食べさせてるけど、あれを拒否する人間が出てくるかもしれないと考えない点や、1年間食べていなかったのになぜカップラーメンなんかがあるのか誰も疑問に思わない点、(これは言いがかりに近いかもしれないが)お湯を捨てるカップ焼きそばでも睡眠薬は効くのか、などなど詰めの甘い箇所が多くてせっかくの設定を活かしきれていないのがもったいない。
また、1年待って(しかもその間に逃げられてしまう可能性などある)健康な体にするのと、現状で売り飛ばすのでそこまで値段が変わるのか?
上記以外にも新たな試練としての二階堂家の奥さん(本当はスキンヘッドのヤクザの奥さん)を口説いて落とさなければいけない、という命令をスキンヘッドのヤクザから出ている、という点が一番不自然。
どうして、スキンヘッドのヤクザが自分の大事な家族を危険な目に合わせるのか、わざわざ別々に暮らさなければいけないのか、他の借金を持った女性ではいけないのか?などなど。
上記のような矛盾点・疑問点を無視したとしても、全体的にあっけなくてもったいない。
というよりは、やはり帯だったりあらすじが大げさすぎるんだよな。
この本に限らず最近の本に多いんだけど、「驚愕の真相」やら「二度読み必至」やら「大ドンデン返し」やら。
そういうキャッチコピーに弱い僕ら消費者や、出版社のせいなんだろうな。
本書「鈴木ごっこ」はもっとさらっと読まれるべき作品。なんなら短編にしてほしいくらいの作品だ。
とりあえず、Netflixに映画あったし映画も見てみよう。
もしかしたら映画はもっと面白いかもしれない。
※その後、映画「家族ごっこ」見てみました。