木下半太「鈴木ごっこ」

まずは秀逸なタイトルが目を惹く。
表紙からにじみ出る少し不気味な感じも小説の世界観をよく表していると思う。
ただ、肝心の中身、小説としてはあっけなく終わってしまった感じ。

個人的に木下半太がそこまでハマれないだけかもしれない。
気になる設定やタイトルの小説が多くて気になって何冊か読んでるけど、「めちゃめちゃ好き!」って作品はまだない。

あらすじ

「今日から、あなたたちは鈴木さんです」。巨額の借金を抱えた男女四人が豪邸に集められた。彼らの責務は、ここで一年間、家族として暮らすこと。見知らぬ者同士が「家族ごっこ」に慣れてきたある日、貸主から次なる命令が下った。失敗したら四人に未来はない―。貸主の企みの全貌が見えた瞬間、想像を超えた“二重の恐怖”がつきつけられる!
引用:Amazon

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鈴木ごっこ (幻冬舎文庫)
  • 木下 半太
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ネタバレありの感想

読みやすい。とにかく読みやすい。
残念ながらそこが弱点になってしまったのではないか。
読みやすいがゆえにそれぞれの小梅とダンとタケシとカツオの視点での違和感や矛盾点がすごくはっきりと見えてしまって、かなり序盤で「複数の家族(ごっこ)の話」か「時系列がずれている」か「複数の人間が嘘をついている」というのが見えてきてしまう。

最後の晩餐で小梅が自分以外の人間にカップラーメンを食べさせてるけど、あれを拒否する人間が出てくるかもしれないと考えない点や、1年間食べていなかったのになぜカップラーメンなんかがあるのか誰も疑問に思わない点、(これは言いがかりに近いかもしれないが)お湯を捨てるカップ焼きそばでも睡眠薬は効くのか、などなど詰めの甘い箇所が多くてせっかくの設定を活かしきれていないのがもったいない。
また、1年待って(しかもその間に逃げられてしまう可能性などある)健康な体にするのと、現状で売り飛ばすのでそこまで値段が変わるのか?
上記以外にも新たな試練としての二階堂家の奥さん(本当はスキンヘッドのヤクザの奥さん)を口説いて落とさなければいけない、という命令をスキンヘッドのヤクザから出ている、という点が一番不自然。
どうして、スキンヘッドのヤクザが自分の大事な家族を危険な目に合わせるのか、わざわざ別々に暮らさなければいけないのか、他の借金を持った女性ではいけないのか?などなど。

上記のような矛盾点・疑問点を無視したとしても、全体的にあっけなくてもったいない。
というよりは、やはり帯だったりあらすじが大げさすぎるんだよな。
この本に限らず最近の本に多いんだけど、「驚愕の真相」やら「二度読み必至」やら「大ドンデン返し」やら。
そういうキャッチコピーに弱い僕ら消費者や、出版社のせいなんだろうな。

2018年 年間ベスト

  1. 詠坂雄二「電氣人間の虞」
  2. 西加奈子「ふる」
  3. 鳥飼否宇「死と砂時計」
  4. 西加奈子「漁港の肉子ちゃん」
  5. 中村文則「遮光」
  6. 宮下奈都「羊と鋼の森」
  7. 筒井康隆「朝のガスパール」
  8. 北山猛邦「私たちが星座を盗んだ理由」
  9. 天祢涼「キョウカンカク 美しき夜に」
  10. 井上真偽「その可能性はすでに考えた」
  11. 井上真偽「探偵が早すぎる」
  12. 江國香織「流しのしたの骨」
  13. 瀬川コウ「謎好き乙女と奪われた青春」
  14. 竹本健治「涙香迷宮」
  15. 下村敦史「闇に香る嘘」
  16. 中村文則「何もかも憂鬱な夜に」
  17. 筒井康隆「ロートレック荘事件」
  18. 本谷有希子「グ、ア、ム」
  19. 野村美月「文学少女と繋がれた愚者」
  20. 豊島ミホ「初恋素描帖」
  21. 野村美月「文学少女と慟哭の巡礼者」
  22. 野村美月「晴追町には、ひまりさんがいる。はじまりの春は犬を連れた人妻と」
  23. 深水黎一郎「ミステリー・アリーナ」
  24. 連城三紀彦「戻り川心中」
  25. 野村美月「文学少女と月花を孕く水妖」
  26. 深水黎一郎「テンペスタ 最後の七日間」
  27. 北山猛邦「先生、大事なものが盗まれました」
  28. 伊坂幸太郎「仙台ぐらし」
  29. 辻村深月「盲目的な恋と友情」
  30. 竹宮ゆゆこ「おまえのすべてが燃え上がる」
  31. 法月綸太郎「ノックス・マシン」
  32. 辻村深月「鍵のない夢を見る」
  33. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  34. 江戸川乱歩「怪人二十面相」
  35. 青山七恵「魔法使いクラブ」
  36. 又吉直樹「火花」
  37. クレア・ノース「ハリー・オーガスト、15回目の人生」
  38. 野村美月「文学少女と穢名の天使」
  39. 伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」
  40. 辻村深月「ハケンアニメ!」
  41. 東野圭吾「仮面山荘殺人事件」
  42. 有栖川有栖「46番目の密室」
  43. 岸田るり子「出口のない部屋」
  44. 青崎有吾「体育館の殺人」
  45. 下村敦史「生還者」
  46. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  47. 村田沙耶香「コンビニ人間」
  48. 東野圭吾「鳥人計画」
  49. 木内一裕「デッドボール」
  50. 佐藤友哉「子供たち怒る怒る怒る」
  51. 山口雅也「PLAY プレイ」
  52. 森絵都「カラフル」
  53. 井上荒野「あなたの獣」
  54. 東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」
  55. 岡嶋二人「そして扉が閉ざされた」
  56. 東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」
  57. 早見和馬「イノセント・デイズ」
  58. 辻村深月「水底フェスタ」
  59. 櫛木理宇「死刑にいたる病」
  60. メグ・ガーディナー「心理検死官ジョー・ベケット」
  61. 瀬尾まいこ「おしまいのデート」
  62. 竹宮ゆゆこ「あしたはひとりにしてくれ」
  63. 連城三紀彦「夜よ鼠たちのために」
  64. 伊坂幸太郎「火星に住むつもりかい?」
  65. 筒井康隆「虚人たち」
  66. 西澤保彦「殺す」
  67. 東野圭吾「放課後」
  68. 長江俊和「出版禁止」
  69. 東川篤哉「密室の鍵貸します」
  70. 倉知淳「星降り山荘の殺人」
  71. 東野圭吾「十字屋敷のピエロ」
  72. 西村京太郎「殺しの双曲線」
  73. 中町信「暗闇の殺意」
  74. 秋吉理香子「暗黒女子」
  75. ネレ・ノイハウス「深い疵」
  76. 折原一「覆面作家」
  77. 恩田陸「木漏れ日に泳ぐ魚」
  78. 豊島ミホ「陽の子雨の子」
  79. 法月綸太郎「雪密室」
  80. 芦沢央「悪いものが、来ませんように」
  81. 恒川光太郎「夜市」
  82. 河野裕「最良の嘘の最後のひと言」
  83. 円城塔「オブ・ザ・ベースボール」
  84. 乾くるみ「嫉妬事件」
  85. 山本甲士「ひなた弁当」
  86. 大石圭「人を殺す、という仕事」
  87. 瀬尾まいこ「温室デイズ」
  88. 瀬尾まいこ「僕らのごはんは明日で待ってる」
  89. 歌野晶午「女王様と私」
  90. 浜口倫太郎「22年目の告白-私が殺人犯です-」
  91. 井上夢人「あわせ鏡に飛び込んで」
  92. 首藤瓜於「刑事の墓場」
  93. 相沢沙呼「午前零時のサンドリヨン」
  94. 大島真寿美「ふじこさん」
  95. ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」
  96. 綾辻行人「どんどん橋、落ちた」
  97. L・M・モンゴメリ「赤毛のアン」
  98. 首藤瓜於「脳男」
  99. 西澤保彦「麦酒の家の冒険」
  100. 山崎洋子「三階の魔女」
  101. 青柳碧人「西川麻子は地理が好き。」
  102. カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ「犯罪は老人のたしなみ」
  103. 湊かなえ「豆の上で眠る」
  104. 野中柊「小春日和」
  105. 新藤卓広「秘密結社にご注意を」
  106. 原宏一「床下仙人」
  107. 島田荘司「斜め屋敷の犯罪」
  108. ジェーン・スー「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」
  109. 折原一「耳すます部屋」
  110. 竹内雄紀「悠木まどかは神かもしれない」
  111. 長江俊和「掲載禁止」
  112. 七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」
  113. 鯨統一郎「邪馬台国はどこですか?」
  114. 木下半太「鈴木ごっこ」
  115. 香月日輪「桜大の不思議の森」
  116. 高木敦史「演奏しない軽音部と4枚のCD」
  117. 遠藤武文「トリック・シアター」
  118. 松田道弘「トリックのある部屋―私のミステリ案内」
  119. 伊原柊人「隣人の死体は、何曜日に捨てればいいですか?」
  120. 川村元気「世界から猫が消えたなら」
  121. 村田治「名探偵は推理しない」