ずいぶん前に読んだものの再読。
いわゆる歴史ミステリーものの範疇に入るんでしょうけど、ミステリーっぽくない。
トンデモ説をミステリーという箱に収めているだけのような感じではあるけど、面白いは面白い。
バーに集まった4人の会話のみで構成されているせいで、とにかく動きがなく、台詞ばかりになっている。
それをごまかすために、お酒や料理の描写を挟んでいるものの、当然のように不必要(また登場人物が食にそこまで興味がなさそう)な描写なため、テンポが悪くなっているだけのような気がする。
1.悟りを開いたのはいつですか?
2.邪馬台国はどこですか?
3.聖徳太子は誰ですか?
4.謀反の動機はなんですか?
5.維新が起きたのはなぜですか?
6.奇跡はどのようになされたのですか?
の全6編。
「5W1H」にしているような気がするんだけど、「謀反の動機はなんですか?」も「維新が起きたのはなぜですか?」も「Why?」なんじゃないの?どうなの、英語詳しい人。
まぁ、ミステリーで「What?」って難しいですよね。
その点「先生、大事なものが盗まれました」は見事だった。
閑話休題。
この中では「奇跡はどのようになされたのですか?」が一番ミステリーっぽい。
カウンター席だけの地下一階の店に客が三人。三谷敦彦教授と助手の早乙女静香、そして在野の研究家らしき宮田六郎。初顔合わせとなったその日、「ブッダは悟りなんか開いてない」という宮田の爆弾発言を契機に歴史談義が始まった…。回を追うごとに話は熱を帯び、バーテンダーの松永も教科書を読んで予備知識を蓄えつつ、彼らの論戦を心待ちにする。ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活―を俎上に載せ、歴史の常識にコペルニクス的転回を迫る、大胆不敵かつ奇想天外なデビュー作品集。
引用:楽天ブックス
ミステリー小説における役割のとしての探偵にとって「どれだけそれっぽく屁理屈を言えるか」って大事な要素の一つだと思うんですよ。
魅力的な謎の真相について、どれだけ魅力的に推理を話して聞かせるのか、というのが大事だと思うんですよ。
そういった意味で、本書では「ブッダは本当に悟りを開いたのか?」や「キリストはどうやって復活したのか?」など、そもそもの”謎”が格別に魅力的。
その謎に対して、無責任に突拍子もない説をぶつけているだけ、もちろん、真相がどうなのかはわからないんだけど、それなりに真相のように聞かせるのは上手。
しかし、バーの中での会話のみ、という設定のせいで小説としてはいささか地味すぎるし、そこをカバーしようとしているのか、不必要な料理やお酒の知識は邪魔になってしまっている。
小説内で無駄話っていうのはとても難しいとは思うんですよね。村上春樹や伊坂幸太郎なんかは無駄話の入れ方とても上手だな、と思う。映画だったらタランティーノ。
とは言え、目の付け所は面白い。