「体育”館”の殺人」と、まるでパロディもののようなタイトルだったり、探偵役の裏染くんがやけにオタクだったりと、すごく今時なライトな学園ミステリ風なんですけど、トリックや謎解き部分はとても硬派でいい意味で裏切られた。
やったぜ。
これがデビュー作ということで、これからも期待しちゃう作家さんの一人になった。
やったぜ。
みんな大好き読者への挑戦状もついてますよ。
風ヶ丘高校の旧体育館で、放課後、放送部の少年が刺殺された。密室状態の体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長の犯行だと警察は決めてかかる。卓球部員・柚乃は、部長を救うために、学内一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。アニメオタクの駄目人間に―。“平成のエラリー・クイーン”が、大幅改稿で読者に贈る、第22回鮎川哲也賞受賞作。待望の文庫化。
引用:楽天ブックス
オタクで変態的で人を食ったような態度の天才。
探偵とはかくあるべし!というような魅力にあふれたキャラクターで大好きだよ、裏染くん。
その他のキャラクターもとても漫画的と言っていいのかな、とにかくフィクション(の中でのステレオタイプ)的。
第1作目ということでより漫画的・アニメ的なキャラクターばかりを出しやすかった、などのような理由もあるのかもしれないけど、そういう漫画的に強調されたキャラクター達のおかげで探偵役(しかも高校生)が刑事の真似事をするという非現実感がうまく溶け込んでる。
実際に漫画だけど、「金田一少年の事件簿」はそこが上手いですよね。キャラクター性もデザインも漫画的だけどディフォルメしすぎていなくて、おどろおどろしさを残しつつ、フィクションならではの非現実感をうまく溶け込ませている。でも、僕は「金田一少年の事件簿」が犯した罪(トリックの盗作)は許さないよ。なにより許せないのはそれでも販売をやめない講談社だけど。
閑話休題。本書「体育館の殺人」の話。
キャラは漫画的なのに、推理部分はとてもロジカル。
まぁ、”黒い傘だから男子”というのはいささか安直すぎる部分ではあるけど、黒い傘一本から推理を展開していき、容疑者を絞り込んでいく様はこれぞ探偵という感じでとても格好よくて心地よい。
終わってみると、プロローグの扱いが見事。
叙述的な部分も楽しめる一冊だ。
「水族館の殺人」の方が評価が高いようで、こっちも読まねばなるまい。
読者への挑戦状については斜に構えすぎなんだけど、これはツンデレっていうことなのかな。