“デート”をテーマにした5つの短編からなる短編集。
と言うものの恋愛ものというわけではなく(全く恋愛要素がないわけではありませんが)様々な関係性の2人のデートにまつわるあれこれ。
瀬尾まいこでつまらないと思ったことがないし、これもやはりすごくよかった。
中学三年生の彗子は両親の離婚後、月に一度、父の代わりに祖父と会っていた。公園でソフトクリームを食べ、海の見える岬まで軽トラを走らせるのがお決まりのコース。そんな一風変わったデートを楽しむ二人だったが、母の再婚を機に会うことをやめることになり…。表題作のほか、元不良と教師、バツイチOLと大学生、園児と保育士など、暖かくも切ない5つのデートを瑞々しく描いた短編集。
引用:楽天ブックス
・おしまいのデート
・ランクアップ丼
・ファーストラブ
・ドッグシェア
・デートまでの道のり
まずタイトルの「おしまい」という言葉のチョイスが見事じゃないですか?
瀬尾まいこは本当に言葉を、日本語を大事にしている人なんだろうな、と感動。
5つの短編、それぞれにとても綺麗な輝きがあるんですけど、MVPは「ランクアップ丼」。
あらすじで言うところの「元不良と教師」のデートになるんですけど、話の展開はとてもベタで、結末はなんとなく読めてしまう。
あとはその結末がどのタイミングで来るのか?ってくらいなんですけど、2人の会話や関係性、2人の人間性がとても素敵で地味な場面ばかりなのにどんどんと引き込まれていく。
あと、たまご丼が本当に美味しそうに書かれてる。美味しそうな食事の描写がある小説は名作。
それに比べて、天丼の描写が(恐らくわざと)味気ないものに書かれていて、三好の味わった感覚(味覚)を読者も感じることができてしまう。
その他4つもどれも優しくてキラキラと輝く短編ばかり。
とは言え、甘ったるだけじゃなくて、しっかりと人間の嫌な部分も覗かせつつ。
それでも、読了後に爽快感が強く残るのはバランス感覚がいいんだろうな。