2016年の本屋大賞。
「本屋が売りたい本」ってのがコピーの本屋大賞ですが、「羊と鋼の森」は誰にでも勧められるような小説ではないと思うんだけどな。
とは言うものの、僕としては勧めてもらってよかった。
最高だった。
高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく―。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。
引用:楽天ブックス
素晴らしい。
素晴らしく遠回りな小説。
この小説の本当の主人公は外村ではなくて、”ピアノ”だと思う。
ピアノにまつわる、色々な登場人物が色々なことを決意していく物語。
一番力が入っているのが音色の描写。
そこをすんなり受け入れて、楽しめるかどうかでこの小説の評価が大きく変わると思う。
音色の描写に文字数もかなり使っているので、そこを楽しめないと退屈な部分がいささか多くなってしまうと思う。
そういった点で誰にでもオススメできるような小説ではなく、結構人は選んじゃう気はする。
外村の成長物語の部分はすごくストレートに描かれていて、たくさんの仲間に助けられて、調律師としての自我が芽生えていく様とかはとてもよくて、感動もできました。
お仕事小説として読むと地味だし、詰めが甘い箇所もありそうだし、Amazon見るとそういう意見もやっぱりありますね。
大きな事件が由仁がピアノが弾けなくなるってくらいしかないんですよね。
そこが地味な印象になってるんだろうな。
ラストシーンもコンクールまでは持って行かずに、柳の結婚披露宴で、外村が調律師として目覚めたシーンで終わらせたのも潔くて、登場人物たちの今後を想像の余白を残していてとても文学的。
とにかく、和音と由仁のふたごの姉妹がすごくいいですよね。
小説のメインテーマが「諦めること」と「進むこと」だとは思うんだけど、それを強く体現していた。
宮下奈都、すごく好きだな。やっぱり。
とはいえ、まだそんなに読めていない作家さんなので、うれしい。
これ映画化するべきじゃないよね。
音色の表現がちゃんと出来るのかが興味もあるけど、圧倒的に不安の方が大きい。
映画「BECK」のコユキの歌声みたいなことにならないといいけど。