これも金沢旅行に持っていった本。途中途中で立ち寄った喫茶店やホテルで読む読む。
なんなら本を読むために喫茶店で休憩をする。
初の西加奈子だったんですけど、最高だ。
これまで読んでこなかったことを後悔してるし、これから読めることを喜んでいる。
池井戸花しす、二十八歳。職業はアダルトビデオへのモザイクがけ、趣味はICレコーダーでの隠し録り。「いつだってオチでいたい」と望み、過去を愛おしみ、誰の感情も害さないことにひっそり全力を注ぐ毎日だった。だがそんな彼女に訪れた変化とは―。過去、現在、そして未来が、新しい「今」とつながる、奇跡の物語。
引用:楽天ブックス
これが初の西加奈子なので見当外れかもしれない。
それでも、思ったのはこの小説は花しすという媒体を通した西加奈子の私小説なんじゃないか。と。
それくらいのリアリティを感じた。
情景やキャラクターや設定や話の展開ではなく、花しすの視点にすごいリアリティを感じた。
「いつだってオチでいたい。」
なんて素晴らしいセリフだ。
「花しす」の現在と過去を交互に章立てた構成で、その時代ごとに現れる「新田人生」やその他のキャラクターたち。
全ての登場人物に「いのち」が宿っているんだけど、その中で「新田人生」にのみ「いのち」を感じない。それは、読んでいる途中では「なぜまた新田人生が?」とか「新田人生って何かの象徴なのか?」とか余計なことを考えてしまうせいなんだろうと思う。
白いふわふわとしたものの正体など、はっきりとした答えを出している小説ではないんですけど、西加奈子が後書きでも言っている通り「いのち」について書いてあるとしたらそりゃ、答えなんて出るわけがない。
というより、答えが出ないことこそが生きるということなんじゃなかろうか、なんてことまで思わせてくれる。
尖った作家なのかな、ってずっと先入観があったんですけどこんなに読み易く、ちゃんと尖ってもいるなんて、最高だ。
大好きだ。
大好きだ西加奈子。