筒井康隆大好き。
SFって普段あんまり読まないジャンルなんですけど、筒井康隆と小川一水は好き。
そんな筒井康隆の数少ない推理小説。
「富豪刑事」といい、筒井康隆の推理小説は最高だ。もっと書いて欲しいよ。
夏の終わり、郊外の瀟洒な洋館に将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まった。ロートレックの作品に彩られ、優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのだが…。二発の銃声が惨劇の始まりを告げた。一人また一人、美女が殺される。邸内の人間の犯行か?アリバイを持たぬ者は?動機は?推理小説史上初のトリックが読者を迷宮へと誘う。
引用:楽天ブックス
とてもフェアだ。
叙述ミステリとしての最高峰に位置する。
叙述ミステリ、しかもかなりの大技使っている、というのはわかっていて読んでも存分に楽しめる。
そもそもあらすじに「前人未到のメタ・ミステリー。」とまで書かれてしまっている。
それでも驚きがあるし、感動がある。
もしもまだ読んでいなくて、トリックとか知らないのであれば、今すぐにでも読むべき。
語り手を隠すタイプの叙述ミステリ。
部屋の見取り図で「もしや浜口と重樹は別人では?」と思ってしまうんだけど、美女三人のキャラクターや人間関係、ロートレック荘の雰囲気などで単純に読み物として面白くグイグイ読み進んでしまい、文章に散りばめられている違和感にも気付けなかった。
最後の独白も今読むと少し長く感じ、読者に対してやけに親切でこの時代まだ叙述トリックが一般的なものではなかったんだろうな、と想像できる。
そんな時代にこれだけの完成度のものを書くなんて、筒井康隆はやっぱり天才だ。
筒井康隆の引き出しの多彩さ、身体障碍者と差別問題に対する想いなど、やっぱりミステリこそ、エンターテイメントに一番ふさわしいジャンルだな、と思わされる名作だ。
そして筒井康隆は極上のエンターテイメント作家でありながらも素晴らしき文学者だ。