飯田譲治 梓河人「盗作」

芸術とはなんぞや、みたいな話はすごく好き。
期待していた感じではなかったけど、割と楽しめた。

あらすじ

田舎町に暮らす平凡な女子高生の彩子は、ある晩不思議な夢を見る。何かに突き動かされるように夢の光景をキャンバスに描き上げた彼女。見る者すべてを魅了してしまうその絵は、やがて日本中に知れわたる。しかし、まったく同じ作品がすでに存在していたことが明らかになり…。創作の根源を問う衝撃作。
引用:Amazon「盗作」

ネタバレありの感想

「芸術とはなんぞや。」みたいな話がすごく好きだ。
本書は「芸術」というよりは「創作」とはなんぞや。なんですけど。
その「芸術」の持つ力についての矛盾が気になってしまう。
主人公の彩子が天啓とも言える激しいインスピレーションを受けて完成させた「どこまでも」。
その「どこまでも」よりも先に存在していた「天を走る」とその作家である原野アナンが教師や美術評論家にも知られていないレベルなのが不自然。
技術のない彩子よりも、アナンの「天を走る」の方が技術がある分より魅力的な作品だったはず。
僕はそういう考えは大嫌いだけど「技術云々を超えた作品」ということだとしても、納得出来ない。
実際、彩子が「天を走る」を見た時はすごく引き込まれていたわけだし。

あと、第二部の音楽編いるかな?
第二部を書くくらいならその分、盗作を疑われた不幸や苦難をもっと描いてほしかった。
この第二部が音楽という媒体を使用したせいなのか、一気に俗っぽくなってしまっている。
まぁ気になる点はあるものの小説としては読みやすくて楽しい。

彩子はかわいそうな人生を送っていたわけだから最後に報われてよかった、という気持ちはありつつも、すっきりしない部分もある。
彩子は苦難はあったけど苦労はしてないんだな、なんて考えてしまうと不公平すぎる小説だと思う。
まぁ、紫苑が報われて良かった。
彼女が報われなかったら満足度大きく変わってたな。

「人間」と「芸術」を深く描く物語であるはずなのに、登場人物や芸術作品が、物語のつじつま合わせに使われている感じは多々あり残念。
こういう小説はドラマ性を多少犠牲にしてでも、「人間」や「芸術」を描いて欲しかった。

2017年 年間ベスト

  1. 村田沙耶香「殺人出産」
  2. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  3. ルイス・サッカー「穴」
  4. 梓崎優「叫びと祈り」
  5. 舞城王太郎「煙か土か食い物」
  6. 舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」
  7. 柾木政宗「N0推理、NO探偵?」
  8. 城平京「虚構推理」
  9. 辻村深月「名前探しの放課後」
  10. 三島由紀夫「命売ります」
  11. 森博嗣「すべてがFになる」
  12. 米澤穂信「満願」
  13. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  14. 江戸川乱歩「江戸川乱歩名作選」
  15. 太宰治「人間失格」
  16. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  17. 深水黎一郎「五声のリチェルカーレ」
  18. 麻耶雄嵩「貴族探偵」
  19. 朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」
  20. 喜国雅彦「本棚探偵の生還」
  21. 森博嗣「冷たい密室と博士たち」
  22. 西澤保彦「殺意の集う夜」
  23. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  24. 森絵都「宇宙のみなしご」
  25. 湊かなえ「山女日記」
  26. 霧舎巧「名探偵はもういない」
  27. 泡坂妻夫「湖底のまつり」
  28. 降田天「女王はかえらない」
  29. 森絵都「気分上々」
  30. 辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
  31. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  32. 辻村深月「光待つ場所へ」
  33. エドガー・アラン・ポー「黒猫」
  34. 歌野晶午「そして名探偵は生まれた」
  35. 法条遥「忘却のレーテ」
  36. 折原一「グランドマンション」
  37. 辻村深月「ロードムービー」
  38. 瀬尾まいこ「強運の持ち主」
  39. 志駕晃「スマホを落としただけなのに」
  40. 桐山徹也「愚者のスプーンは曲がる」
  41. 峰月皓「七人の王国」
  42. 湊かなえ「母性」
  43. 飯田譲治 梓河人「盗作」
  44. 伊坂幸太郎「残り全部バケーション」
  45. 折原一「遭難者」
  46. 折原一「螺旋館の殺人」
  47. 芦沢央「罪の余白」
  48. 井上夢人「魔法使いの弟子たち」
  49. ジェフリー アーチャー「百万ドルをとり返せ!」
  50. 伊坂幸太郎「首折り男のための協奏曲」
  51. 竹吉優輔「襲名犯」
  52. 湊かなえ「境遇」
  53. 長谷川夕「僕は君を殺せない」
  54. 早坂吝「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」
  55. 蘇部健一「六枚のとんかつ」