歌野晶午「そして名探偵は生まれた」

「葉桜の季節に君を想うということ」はあんまり好きじゃないです。
正直評価高すぎると思うんですよ。
歌野晶午で言うなら、「密室殺人ゲーム王手飛車取り」や「さらわれたい女」の方が面白い印象。

表題作を含む密室(密閉空間)にこだわった4編の短編集。

いや、そもそも短編でいいのかな、中編かな。
まず「そして名探偵は生まれた」ってタイトルが最高すぎる。
ミステリーってジャンル自体が、もともとエンタメ向けのものですが、まさしく今作はエンタメとしてのミステリーとしてすごくいい。

あらすじ

影浦逸水は、下世話な愚痴が玉に瑕だが、正真正銘の名探偵である。難事件解決のお礼に招かれた伊豆の山荘で、オーナーである新興企業の社長が殺された。雪の降る夜、外には足跡一つなく、現場は密室。この不可能犯罪を前に影浦の下す推理とは? しかし、事件は思わぬ展開に……。(「そして名探偵は生まれた」より)“雪の山荘”“孤島”など究極の密室プラスαの、ひと味違う本格推理の傑作!
引用:Amazon「そして名探偵は生まれた」

ネタバレありの感想

そして名探偵は生まれた

コメディでしたね。
解決した事件を発表したら訴えられて多額の借金を背負った名探偵。
密室トリックはさすがに安っぽいというか、スケールが小さい感じ。
コメディとしてもっと派手で非現実的なものでもよかったのでは?

生存者、一名

タイトル聞いたことあるなぁ、って思ってたらこれだけで一冊出てるやつですね。
多少アンフェアな部分(屍島において男性一名を救出した)はありますが、江戸川乱歩的な世界観で大好物だし、最後の全ての真相を明らかにしない感じはすごく好き。
長編にしてもらいたいな。
もっと長くこの物語にのめり込んでみたい。

館という名の楽園で

ミステリ好きが館に集まって、(ゲームとして)事件を起こす。
という設定はどうしたってワクワクするし「それだけで終わるわけがない。実際の被害者が出てくるはずだ」と思いながら読んでしまうわけですけど、そこをうまくすり抜けた後の結末。
推理小説としても娯楽小説としても楽しい。

とても親切でフェアにヒントを出してくれていたおかげで僕にしては珍しくトリック読めましたが、名短編。

夏の雪、冬のサンバ

なんとなく、このトリックを読んだことある気がするんですけど、他で使われてましたっけ?
それとも、この作品をどこかで読んだことがあるのかな。

ボーナストラックということだそうですが、これは収録しない方が本として全体の締まりがよくなったのでは?
個人的に好きじゃないだけかも、ですが。

まとめ

歌野晶午のいろいろな側面を見ることができるいい短編集。
「葉桜の季節に君を想うということ」は置いておいてやっぱり作家としてはすごく好きなほうに入る作家だ。
良き良き。

2017年 年間ベスト

  1. 村田沙耶香「殺人出産」
  2. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  3. ルイス・サッカー「穴」
  4. 梓崎優「叫びと祈り」
  5. 舞城王太郎「煙か土か食い物」
  6. 舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」
  7. 柾木政宗「N0推理、NO探偵?」
  8. 城平京「虚構推理」
  9. 辻村深月「名前探しの放課後」
  10. 三島由紀夫「命売ります」
  11. 森博嗣「すべてがFになる」
  12. 米澤穂信「満願」
  13. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  14. 江戸川乱歩「江戸川乱歩名作選」
  15. 太宰治「人間失格」
  16. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  17. 深水黎一郎「五声のリチェルカーレ」
  18. 麻耶雄嵩「貴族探偵」
  19. 朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」
  20. 喜国雅彦「本棚探偵の生還」
  21. 森博嗣「冷たい密室と博士たち」
  22. 西澤保彦「殺意の集う夜」
  23. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  24. 森絵都「宇宙のみなしご」
  25. 湊かなえ「山女日記」
  26. 霧舎巧「名探偵はもういない」
  27. 泡坂妻夫「湖底のまつり」
  28. 降田天「女王はかえらない」
  29. 森絵都「気分上々」
  30. 辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
  31. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  32. 辻村深月「光待つ場所へ」
  33. エドガー・アラン・ポー「黒猫」
  34. 歌野晶午「そして名探偵は生まれた」
  35. 法条遥「忘却のレーテ」
  36. 折原一「グランドマンション」
  37. 辻村深月「ロードムービー」
  38. 瀬尾まいこ「強運の持ち主」
  39. 志駕晃「スマホを落としただけなのに」
  40. 桐山徹也「愚者のスプーンは曲がる」
  41. 峰月皓「七人の王国」
  42. 湊かなえ「母性」
  43. 飯田譲治 梓河人「盗作」
  44. 伊坂幸太郎「残り全部バケーション」
  45. 折原一「遭難者」
  46. 折原一「螺旋館の殺人」
  47. 芦沢央「罪の余白」
  48. 井上夢人「魔法使いの弟子たち」
  49. ジェフリー アーチャー「百万ドルをとり返せ!」
  50. 伊坂幸太郎「首折り男のための協奏曲」
  51. 竹吉優輔「襲名犯」
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  53. 長谷川夕「僕は君を殺せない」
  54. 早坂吝「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」
  55. 蘇部健一「六枚のとんかつ」