村田沙耶香「殺人出産」

ちょっと信じられないくらい面白い。
村田沙耶香は「ギンイロノウタ (新潮文庫)」「マウス」に続いて三冊目で、これまでも面白いと思っていたし、外れないんじゃないか、と思ってはいたのですが、これはちょっと飛び抜けて面白い。

あらすじ

今から100年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」によって人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日突然変化する。表題作、他三篇。
引用:Amazon「殺人出産」

「今から100年前、殺人は悪だった。」
これだけでもう、最高なんですけど、

「10人産んだら、1人殺せる。」
なにこれ。
すごい。

ネタバレありの感想

人口の減少が深刻になった、100年後の日本。
「10人の子供を産んだら、1人の人間を殺しても良い」という価値観が常識となった世界。

子供を10人産んだ人は「産み人」と呼ばれ、指名した人間1人(「死に人」と呼ばれる)を殺すことができる。
「死に人」には1ヶ月の猶予が与えられ、殺されたくなければ自殺をすることも可能なんですけど、この「自殺をすることも可能」って部分がすごいと思うんですよ。
死に方を選べる。ということは生き方を選べるということにつながるので、この世界で、命が軽々しく扱われているわけではないんですよね。

主要な登場人物は3人。
主人公の育子
育子の姉で、自分の殺人衝動を自覚し「産み人」となった
育子の会社の同僚で、「殺人出産制度」を否定する早紀子
彼女らがそれぞれ、ちゃんと考えや哲学を持っていて、そりゃぶつかるし、悩むし。
そういうぶつかったりや、悩み、こそが文学なんだと思う。

村田沙耶香が「命」というものをどういう風に捉えているのか。
何も思い入れがなくて、こんな小説は書けっこないと思うのですが、思い入れがある割にはとても公平に命のあり方を捉えているんじゃないかと。

とにかくめちゃめちゃ面白い。
最高。

表題作以外の3作もそれぞれ、常識を疑っていて面白い。

大事な一冊がまたできた。

2017年 年間ベスト

  1. 村田沙耶香「殺人出産」
  2. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  3. ルイス・サッカー「穴」
  4. 梓崎優「叫びと祈り」
  5. 舞城王太郎「煙か土か食い物」
  6. 舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」
  7. 柾木政宗「N0推理、NO探偵?」
  8. 城平京「虚構推理」
  9. 辻村深月「名前探しの放課後」
  10. 三島由紀夫「命売ります」
  11. 森博嗣「すべてがFになる」
  12. 米澤穂信「満願」
  13. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  14. 江戸川乱歩「江戸川乱歩名作選」
  15. 太宰治「人間失格」
  16. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  17. 深水黎一郎「五声のリチェルカーレ」
  18. 麻耶雄嵩「貴族探偵」
  19. 朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」
  20. 喜国雅彦「本棚探偵の生還」
  21. 森博嗣「冷たい密室と博士たち」
  22. 西澤保彦「殺意の集う夜」
  23. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  24. 森絵都「宇宙のみなしご」
  25. 湊かなえ「山女日記」
  26. 霧舎巧「名探偵はもういない」
  27. 泡坂妻夫「湖底のまつり」
  28. 降田天「女王はかえらない」
  29. 森絵都「気分上々」
  30. 辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
  31. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  32. 辻村深月「光待つ場所へ」
  33. エドガー・アラン・ポー「黒猫」
  34. 歌野晶午「そして名探偵は生まれた」
  35. 法条遥「忘却のレーテ」
  36. 折原一「グランドマンション」
  37. 辻村深月「ロードムービー」
  38. 瀬尾まいこ「強運の持ち主」
  39. 志駕晃「スマホを落としただけなのに」
  40. 桐山徹也「愚者のスプーンは曲がる」
  41. 峰月皓「七人の王国」
  42. 湊かなえ「母性」
  43. 飯田譲治 梓河人「盗作」
  44. 伊坂幸太郎「残り全部バケーション」
  45. 折原一「遭難者」
  46. 折原一「螺旋館の殺人」
  47. 芦沢央「罪の余白」
  48. 井上夢人「魔法使いの弟子たち」
  49. ジェフリー アーチャー「百万ドルをとり返せ!」
  50. 伊坂幸太郎「首折り男のための協奏曲」
  51. 竹吉優輔「襲名犯」
  52. 湊かなえ「境遇」
  53. 長谷川夕「僕は君を殺せない」
  54. 早坂吝「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」
  55. 蘇部健一「六枚のとんかつ」