湊かなえ「母性」

不安になる。
僕がうがった読み方をしすぎているのかもしれないが、小説の根底を覆しかねない1冊。

小説を読んでいて、基本的に地の文を疑うことは無いんですよ。
そんな今までの読み方に対して不安になる。
もしかしたら、書いてあること全部嘘なんじゃないか。
フィクション・ノンフィクションという話ではなくて。
意図的じゃないにしても、嘘なんじゃないか。

あらすじ

女子高生が自宅の庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が入り混じり、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語。
引用:Amazon「母性」

ネタバレありの感想

他の方の感想をいくつか読んでみると、ほとんどの方が
ルミ子の視点である「母の手記」は歪められた記憶で、
清佳の視点である「娘の回想」が真実であると捉えていました。
あらすじにも「浮かび上がる真相」と書かれているので、「娘の回想」が真実ということでいいんでしょうけど、ルミ子の記憶の歪め方も理解できてしまうし、自分にも思い当たる節がある。
自分の中の記憶の改ざんもそうですが、自分も他人から言われたショックな記憶なんかもその本人は全く覚えていなかったり。そんなことは思い当たる節は誰でもあるかと思うんですね。

そう思うと「娘の回想」もどこかしら歪められた部分があるのでは無いかと疑ってしまう。
僕なんかは「忘れたい記憶」ほどよく覚えているものなので、この物語も良く無い部分だけど紡いでいったものが「真相」なのではないかな、と、思えてしまって。
そうすると、救われないな。
なんとも辛い話。

宗教出てきて、俄然面白くなってきた!と思ったら存外早く退場してしまって、そこは残念。
インチキ宗教楽しい。

全体的にやっぱり読みやすくて好きなんだけど、どうしたって「告白」は超えられないのかな。

2017年 年間ベスト

  1. 村田沙耶香「殺人出産」
  2. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  3. ルイス・サッカー「穴」
  4. 梓崎優「叫びと祈り」
  5. 舞城王太郎「煙か土か食い物」
  6. 舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」
  7. 柾木政宗「N0推理、NO探偵?」
  8. 城平京「虚構推理」
  9. 辻村深月「名前探しの放課後」
  10. 三島由紀夫「命売ります」
  11. 森博嗣「すべてがFになる」
  12. 米澤穂信「満願」
  13. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  14. 江戸川乱歩「江戸川乱歩名作選」
  15. 太宰治「人間失格」
  16. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  17. 深水黎一郎「五声のリチェルカーレ」
  18. 麻耶雄嵩「貴族探偵」
  19. 朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」
  20. 喜国雅彦「本棚探偵の生還」
  21. 森博嗣「冷たい密室と博士たち」
  22. 西澤保彦「殺意の集う夜」
  23. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  24. 森絵都「宇宙のみなしご」
  25. 湊かなえ「山女日記」
  26. 霧舎巧「名探偵はもういない」
  27. 泡坂妻夫「湖底のまつり」
  28. 降田天「女王はかえらない」
  29. 森絵都「気分上々」
  30. 辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
  31. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  32. 辻村深月「光待つ場所へ」
  33. エドガー・アラン・ポー「黒猫」
  34. 歌野晶午「そして名探偵は生まれた」
  35. 法条遥「忘却のレーテ」
  36. 折原一「グランドマンション」
  37. 辻村深月「ロードムービー」
  38. 瀬尾まいこ「強運の持ち主」
  39. 志駕晃「スマホを落としただけなのに」
  40. 桐山徹也「愚者のスプーンは曲がる」
  41. 峰月皓「七人の王国」
  42. 湊かなえ「母性」
  43. 飯田譲治 梓河人「盗作」
  44. 伊坂幸太郎「残り全部バケーション」
  45. 折原一「遭難者」
  46. 折原一「螺旋館の殺人」
  47. 芦沢央「罪の余白」
  48. 井上夢人「魔法使いの弟子たち」
  49. ジェフリー アーチャー「百万ドルをとり返せ!」
  50. 伊坂幸太郎「首折り男のための協奏曲」
  51. 竹吉優輔「襲名犯」
  52. 湊かなえ「境遇」
  53. 長谷川夕「僕は君を殺せない」
  54. 早坂吝「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」
  55. 蘇部健一「六枚のとんかつ」